real

□one
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それは、小さな望みから始まった。

彼を神と崇める人々に、少しでも「彼」として近づいてもらえるように、親近感を持って欲しくて。

接する側に神として一線を引かれて相対される、そんなことが続けばやるせなくなるのも無理はない。
彼はその悩みを直接口に出すことはしなかったが、それを証明するかのように私の案にとても喜んでくれた。




――ほんの戯れのつもりで。

私は、音楽という誰にでも愛される物を利用して、彼と人々の間に勝手にできた「神」という偶像を破壊したかっただけ。
ポップンパーティーを始めたきっかけはそれだけの、小さな願いだった。

ただ彼の中に潜む多くの小さな傷が癒えたなら、それでよかった。
…一人でも多く、彼自身を見つめてくれる誰かが増えればそれでよかった。


ところが、ことは思うように運ばなかった。
関わる対象が増えていくなか、どうしても彼を「神」としてしか見れない人間や生き物がでてくる。

彼は――主は、そんな残酷な現実を埋めるかのように、更にパーティーを開き参加する対象を増やしていった。
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