眠り姫は籠の中

□KilL
2ページ/9ページ

「ねぇジズ」


実体を持たない彼が木立をすり抜けながら、なんでしょうと首を傾げて尋ねる。

「私は貴方が嫌いよ」
「えぇ知っています」
「本当のことよ。冗談ではなくってよ。真剣に言っているの」

これは何度も伝えた事だった。


だって仕方がないじゃない。
彼は私のみを中心に動き、考え、自らを犠牲にする。
私はそんな彼を見ていられなかった。

腐りはて、人ならざるモノとして尚生きる私を私は嫌いだったから。
そんな私を慕う彼の気持ちは理解できなかったし、信用できなかった。

もっとも、彼とて人ならざる身だけれど、同じような存在を探せば私より見られる容姿の相手は山のようにいるはずなのだ。



もう一つ、彼を嫌う理由がある。

生前の今際(いまわ)の際の私を今の状態で生かしたのは彼だった。


…なぜあのまま死なせてくれなかったのか。
安らかに眠りたかったのに。

――あの時、死んでいれば。今こんな目にあわなかったのに。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ