眠り姫は籠の中
□SiN
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見ましたか、とすきま風みたいな声でハヤトが聞いてくる。俺はうなずくだけで答えた。
あの子の声を聞いた奴が俺達の他にもいるかもしれない…つまり安易に声をたてられないと思ったし、もちろん、情けないけど怖かったからだ。それに口を開けば吐きそうで、それも避けたかった。
あんな瞬間を見てしまうなんて。炎が生じる前から目が離せなくなって、それで、壊されていく死体を縫いつけられたみたいに見るしかなくて
「ぅ、………え」
思い出したら胃の中から酸っぱいものとザラザラしたものがせりあがってきた。
口を押さえて耐えていたら、ハヤトが背中を撫でてくれた。ありがたい。
「……、………」
とにかく居場所が知れたらまずい。何か叫ぶ声が懇願するみたいに聞こえたから思わずここまで来たけど、こんなことなら来るんじゃなかった。
呼吸と心臓を落ち着かせながら無言でハヤトを促してその場から離れる。
しばらく這って、木の幹が大きく内側に窪んだ空間を見つけて中へ入った。