CuT

□虚無と黒と線
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真っ白な紙に続けて線を二本引く。
まっすぐなそれらは決して交わらない。



五線符を引こうとして、手が止まった。


ああ、まるで私と神のようだと、
自嘲気味に笑う。




…神に好意を、異性に抱く感情よりも遥かに深い思いを自覚したのは最近の事だ。

その笑顔に、優しさに、強さに惹かれて、
彼の立場や才能など二の次で、とにかく全てが眩しく見えた。
存在そのものを好きだと感じた。

だが私にはそれを伝える術はない。


私は闇に住まう者だから。
血を得なければ生き長らえることはない、呪われた種族だから。
…神とは違い、忌み嫌われた存在だから。


なんという皮肉。

好いた相手には何も求めなくても、気持ちと向き合うと自身に臆病になって、
自分の汚点を気にしてしまう。



こんな気持ちは初めてだ。
自分以外の誰かを愛し、そんな自分に嫌気がさす。
気づいて欲しい、なのにそれをひた隠しにしたい矛盾。

感情の間に板挟みになり壊れてしまいそうだと、
いっそそうなれたら、という思いと。
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