BlacK-2
□涙の還る場所
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なんでだろう。
思い描いていた場所に立ったはずなのに、不安がちっとも拭えない。
幸せなはずの毎日は、まばたきするより早く過ぎ去っていくのに。
朝の日差しが差し込む部屋の真ん中で、一人ため息をついた。
炊きたてのご飯、身が柔らかそうな焼き魚、湯気をたてている味噌汁を二人分並べて、あとはエムを起こしにいくだけ。
なのになぜか、足を動かせない。
体調がすぐれないわけじゃないし、喧嘩をしたわけでもない。
俗にいう倦怠期とやらか、なんて考えてもみたが以前よりずっと深い仲になっている、と思う。
何が不安なのかもよくわからないまま、鬱々とした感情が今の風景すら霞ませる気がして眉をひそめた。
「六、おはよ。なんか考え事?」
「!…あ、あぁ、おはよう」
迂闊にもエムが背後に立ったのにも気づけなかった。
否、起きる前に起こしに行けなかった自分を恨みたくなった。
「…ずいぶん難しい顔してるね。疲れてる?」
「いや、大丈夫だ」
エムは悪くなんかない。
これは俺の問題だから。