CuT-2
□奈落
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凪ぎはらった音に、切り捨てた相手が倒れこむ音が重なった。
自分が吐く乱れる息にも、やがて死体に変わる相手の切り口からのぼる湯気が絡んで思わず眉をしかめる。
まだ、だ。
まだ俺はこいつと同じモノ以上になれていない。
もっと、もっと狩らなきゃならない。
鞘に刀をおさめて月を見上げる。
先ほどの音も白い蒸気も吸い込んだ空の真ん中で輝く存在に目を細めた。
あの日も似たような月を眺めていて、突然あの男から好きだと言われた。
そばにいたい、それだけでいいと言われて。
俺はその告白に即答できずに、俺自身を振り返ってこう考えた。
"俺が何をやっているか、知っていて言っているのか"
そしてこう答えた。
"答えはもう少し待っていてくれないか"
−−俺は人殺しなんだ。
請け合って殺して金をもらって、その繰り返し。
だから神に愛される資格なんてない。
仕事をやめるわけにもいかない。それは俺が死ぬことを意味する。
だから、神につりあうはずもない俺はずっと同じ場所にとどまるしかないんだ。