CuT-2
□Calling
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「出張?」
暇つぶしに寄ったケーの家で、いきなり切り出された単語に眉を寄せた。
一生縁のなさそうなそれを口にしたケーが、温かいコーヒーを差し出してきながら俺が占拠した小さいコタツに無理やり入りこんでくる。
隙間風が一瞬だけ入って、寄せた眉の皺をますます深くさせた。
「あー、単身赴任かな…2週間くらい?」
「それは出張でいいんじゃね?」
「そうなのか?まあいいや、とりあえずその期間ここには帰らないからよろしくな」
「よろしくって…俺に何をさせる気だ」
「留守番とか?」
「とか?じゃねえよ。俺は主婦じゃないぞ」
「ケチだなー。帰ってくる日にお出迎えとかもナシか?」
「……そのくらいならやってやらなくもない」
嬉しそうに笑うケーを半眼でながめつつ、心の中で“無理しやがって”と呟く。
あまり目を合わせないようにしているところから察するに、たぶん裏稼業に関することだろう。
腕はたつ方みたいだから、たぶん組織間の抗争とかなんとか、それに駆り出されたってとこだろう。
「…まあ、気が向けば連絡くらいはしてやる」
「お、気前いいじゃん」
「その代わり早く帰ってこい」
俺に干渉することも止めることもできない以上、このくらいのワガママなら許されてもいいだろう。