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□flowers for ×××
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6月15日(水)

我々は逃れた。世界から。
正しくは私が彼を連れ出した。あまりに膨大な情報、感情、諍(いさか)い全てが神を壊したからだ。

思えば彼は随分前から不調を訴えていたように思う。全ての元凶。できるなら奴らを過去に戻って殴ってやりたい。
だが出来ないのだから思ってみたところでどうしようもない。


神を、彼をここまで陥(おとしい)れた世界なぞいらないのだ。

そもそもあらゆる生命は恩恵を受け過ぎた。彼の成したこと――星々の距離感、重力、あらゆる素子に気を配り創世することがいかに神経を使うか。
それから忘れてはならないのが、全ての父であるにも関わらず、進化がどう形状をなそうと歴史がどう転ぼうとも傍観するしかない立場の理不尽さ。

神という名の彼にそこまで思いを馳せた、馳せようとした彼の子供らは一人でもいたのだろうか?

祈りも何も届かない静寂なこの場所は無音。


何の反応も示さず眠るように横たわるだけの神を一瞥した。

私に医学的知識がなくとも分かる。予後は思わしくないだろう。
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