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□お侍様の青年事情
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眩暈がするようだと、思った。

煩悩がどうだとか言っている身ではあるが、俺もそこそこ年頃の、つまりまぁ男なんだ。エムではないが、それこそ、欲なんてものだって持ち合わせているわけで。

あぁ。下らない。
けれど、下らないと一蹴するには、あまりにも。


「六ー。お風呂開いたよー」


お先に、とひらひら手を振るエム。

明るい茶の髪は濡れて暗い色だった。長い前髪を後ろの方に撫で付けて、一つに結んであった。首筋とかが、濡れてる。

普段はうっとうしく左右に分けている前髪。それがないだけでこうも変わるのか。
オールバックというのは今までも何度かは見たが、慣れなかった。

その頬も、目元も、よく分かる。
唇は俺の名を呼んで、瞳は俺を捕らえる。

暑いからと上はタオルをかけたままの姿。
よく俺のことを色白だとかいうが、エムだって十分に白い肌だ。全体的に細くて、あんなに細いのに俺を軽々持ち上げるってどういう腕力なんだ。
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