BlacK
□邂逅
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暗い闇の中、泣き声が響いていた。
いつもなら、『ああ、またか』とやりすごすそれを、
何故かその時は『この声の持ち主を救いたい』と、そう思った。
それが、始まりだった。
「…っ、ぐすっ」
小さくしゃくりあげる声。辺りはむせるような血の匂い。
おおかたの状況を読み取って、声の主を驚かせないよう近づいた。
「…誰だか知らないが、私にそれ以上近づくな。
周りに転がる奴らと同じ末路を辿りたいのか?」
その主は幼い声ながら、殺気を含み
なおかつずいぶん大人びた言い回しで警告してきた。
「…それでお前が救われるなら」
その当時は、自分はまだ神として未熟で。
世界は混沌し、統一も計れないまま
生き物達は他者の存在を見境なく殺す状況下にあった。
起こっている全てが自分の責任ではないけれど、
起因になるモノを創り出した張本人は自分だという事に変わりはない。
だから。
「…変わった奴だな。死にたいのか?」
「まぁね。……死ねないけど。神だから」
「神?」
空気を震わせる程に、場の雰囲気が一変した。
それまでとは比べ物にならない覇気が漂う。
(俺に似てるな、こいつ)
大切な存在を無くした、あの頃の自分に。
「父様と母様を殺しにきた奴等は『神の為』と言っていた……
あれがお前の差し金なら、私は容赦しない!!」