眠り姫は籠の中
□NothinG
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「…?」
彼女の言いたいことがわからず、思わず眉をひそめた。リデルはジズを憎んでいるとばかり思っていたからだ。
「…わからんな。奴が気を使うならそれでいいではないか」
「そう?なんだか言ってることに筋がとおらない気がしてよ」
それはお前もだ、リデル。そう言い返そうとして止めた。
本当はリデルはジズを、……。
過ぎ去ったあの日を思い出して奥歯を噛みしめる。
あの時の違和感を信じていたなら、少なくとも誰かを、何かを守れたはずなのだ。
私は戦える力量があった。なのにその準備を怠ったも同じこと。覚悟がなかったと言ってもいいだろう。
――今の私には心の迷いもなく、覚悟などとうにできている。
唯一の案ずるべきは、自分の持つ魔力をいつかは対峙する誰かが畏怖するのではないかということくらいだ。
私はこの力を使って戦いを勝ち抜きたいとは思わないし勝ちたくない。
故に、一番に駆け出した。スマイルの叫びは私の背中を押してくれたのだ。
――神を殺そう。
誰かが誰かを殺してしまう前に。
そうなったとしても、それ以上の犠牲を出さぬよう。
…たとえ私一人になってもせめて一矢は報いてやりたい。
そんな事を考えながら、私は神から放たれるほんのわずかな独特の力を感じ取り、迷うことなく進む。