眠り姫は籠の中
□LiE
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低い声が自然と出る。
アッシュのことは傷つけたくなかった。アッシュはまだ、この世界を予知夢だって分かってない。分かる為に殺さなきゃならないことも知らないんだ。このぼくが教えてあげなきゃ。
「黙ってよアッシュ。ね?いいコだからいうとおりにしてよ。ぼくが正しいってすぐ分かるから」
「………スマイル」
信じられないと言いたそうにアッシュが仰ぎ見てくる。ぼくは安心して欲しくて、ぼくの名前どおりの顔で立ち上がった。
「さあ行こう!ユーリが待ってる!」
「スマイル、…だから、ユーリは「うるさいな」っ、」
腕を大きく振り上げて、叩きつけ、アッシュを黙らせる。口の端から血を流しながらもおどおどと見てくる視線に怒りがエスカレートしていくのが自分でもわかった。
ああ畜生畜生、見るな見るな見るな!!こいつも夢の産物なら壊してしまおう!
こいつはアッシュじゃない!!
「スマ…やめ、っげほ!…がッ、ぁア…!!」
叩いて叩いて、それは殴るに変わって、そこらに転がっていた大きくて重たい石を叩きつけるのに変わって、汚い叫びと泣き声をあげるそいつを早く黙らせたくて、ぼくはもう無我夢中でそいつを壊し続けた。そいつは動かなくなるまで身を守っていたけれど、抵抗も応戦もしなかった。でもぼくは油断なんかしない。元の姿がなくなるまで壊さなきゃ。