BlacK
□∵愛∴
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「……じゃあ、行ってくるね」
「………」
見送る事に言葉は添えない。
頭に乗せられた手に思わず身を固くする。
撫でようとしたらしいそれは、すぐに離れて持ち主の元に戻った。
成り立ってもいない会話は終了。
出かける神を見送って、私は私がいる為にあるかりそめの世界に戻る。
まだ不安定な創造途中の世界は混沌としていて、
私どころか生物は生息出来ないらしい。
そんな世界へ出向いた神の背中をもう一度だけ見て、小さな声で友を呼ぶ。
「ハテナ、もういいよ。出ておいで」
『……v』
飛んできたそれ――影とも光ともつかない存在を受け止めて、笑う。
私がハテナを見つけたのは、この世界へ来て少したった頃。
ほぼ毎日、世界を創造する神に置いていかれ、
一人きりで淋しくて不安で、でも神にはそんな事は言えなかった。
目の前で世界を消され、いつか私も神の気分一つで
同じ道を辿るのかと思っていたから。