CuT
□piece
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もう覚えていては辛いから、
ある時を境に忘れるだけに専念しだした。
かけがえのない相手に、もう死んでもいいなんて、
この身が尽きない事も忘れて祈る程の恋を、
失ってから。
一つ、一つ失われていく大切だった者たち。
焼け焦がれて落ちて堕ちた恋(もの)だから、いらない記憶として排除した。
だが、記憶は綺麗に消せなくて。
何かも一緒に抜け落ちる。
嫌な部分だけをごっそり取れずに、
大切な物までなくしていった。
最初はそれに納得がいかなかった。
今じゃそれが当たり前。
手をなくしても地の上を歩けるのと同じ。
どこかつじつまが合わないだけで、やがて慣れていくんだ。
最初から記憶なんて、いいや恋なんてしなくても、
生きてこれたんじゃないかって錯覚するくらいに、俺は忘れる事に没頭して。
そしてついに、全ての恋を忘れる日が来た。