CuT-2
□たとえばもしも
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たとえばもしも。
ちゃんと俺が迷いなく六を刺してあげていれば。
いいや、六を殺そうとしなければよかったのだろうか。
でも殺すしかなかった。
それしかなかった。
六は俺が神様だから、皆に愛されている存在だから、そんな存在から愛されたり特別扱いされるのは怖いなんて悩んでいて。
気にする必要もないし、誰かに赦しを請いながらするような恋なんかじゃないって何度も何度も伝えて、
俺が誰であれ好きだと思ったからこそ近づいてきてくれたはずだと信じて、そして結ばれたはずだったのに。
そう、だからつまり六を殺さなきゃいけなかったのは六が悪いんだ。
俺を信じてくれなかった、俺は六を信じたのに。
神という垣根を作ったのは六の方だ、俺は最初からそれを無視していたのに。
もしも一つだけ俺に落ち度があるなら、六を愛していたからこそ、ナイフを肉に抉り込ませる瞬間に迷ってしまったことだろう。