BlacK-2
□甘い惨劇
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息を飲むような、それでいて絶叫に近い声が聞こえてきた。
「どうしたっ」
慌てて駆けていく先は小さな台所。
Mが『すごいもん食わせてやるから来いよ』とか何とか言って、断る理由もない俺はリビングで炬燵に入って待っていた。
そんな平和すぎるこの場所に何があったんだ。
Mに何かある、その予兆があれば勘づくはずなのに…!
そんな焦燥感と戦いながら俺が見たものは。
蛍光灯に照らされ、やたら白く感じる壁に飛び散る血、肉片、目玉。
――と、魚のウロコ。
そして頭を抱える格好のまま、しゃがみこんで震えるMの姿だった。
「…何があったんだ」
Mはまな板とは正反対の位置、冷蔵庫の前で俺を見上げる。
「さ、魚が…」
「?」
「魚が俺を睨んだ」
「……は?」
まな板の上には(たぶん)鯛が置かれ、無惨な姿でさばかれていた。というかコレは下手な解体ショーにしか見えない。
笑うべきか心配してやるべきか迷って(俺の中では前者が勝ちそうだったがなんとか我慢した)、Mの前に両膝をつく。