real

□LOVE
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俺はまず幕引きをする為、全てをあざむく演技を始めた。
存在すらしない「黒神」を作り上げ、もう一つの人格に見せかけて。

狂ったふりを装い、優しい影まで騙してあのアイディアを引き出させて。
あの願いを遂げられないと知ったその日、せめて理想に近い形をとると決めて眠りについた君にあの悪夢を見せたんだ。



そうだ、あの夢のために君の記憶を利用させてもらったことも謝らなきゃ。嘘と真で補ってまであんな虚像を見せるなんて…残酷な仕打ちだったよね。本当に、ごめん。

――皆が死んだのは本当。ただし、夢の中ではなく現実で。君が眠る間、皆が寿命や病気で死んでいった。
俺は彼らに関する君の記憶をカケラにしてほんの少し、俺が用意した脚本の域を出ない程度の個性を与えた。

覚悟はしていたけど、見ていて辛かった。
もう一度命を断つのと同じことをしてしまったのだから。

それから、影の消失も真実だ。
あいつは俺が殺したも同然なんだ。記憶のカケラ達を効率よく動かす為、君の姿をかたどった影は自ら望んで消えた。

それが俺のためになると疑いもせずに。
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