眠り姫は籠の中
□GoD
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アンネースが私の止める間もなく、いきなり火を放つまではただひたすらにまだ何とかできると思っていた。
(何を、アンネース、やめろ!!)
声の限りに訴えたいのに、かすかな音すらこの体からは零れていかない。
「…かげがロキをころしてくれた、だから私もころしていい。私はかげとたたかえないしころせないけど大丈夫」
ぶつぶつ何か呟き続けるアンネースの言葉は小さすぎて私には届かない。
すれ違い続ける我々の前ににいつかのパーティーで出会った少年が現れた。
たしか、リュータといったか。
どうするべきか考えあぐねていると、リュータは戦う意志がない類の台詞を並べ、そして。
澄んだ声で高らかに歌い始めた。
エムとじゃれていたあの時が蘇って息を飲む。
ほんの少し甘い記憶がよぎり、目頭が熱くなった。
瞬間。
物凄い爆発音に、一気に現実に引き戻された。
リュータが隠れていたらしい自身の後輩の名を呼ぶ声、猜疑心で自分を見失ったアンネースの叫び。
そして、目を覆いたくなるほどの悲劇の連続。
全てが終わっていくのに、私はただ呆然と立ち尽くすしか出来なかった。