眠り姫は籠の中
□GoD
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「逃げるなよ、ユーリ」
いつもの彼の声とは違う、低くて冷めたそれがMZD自身の口から漏れて眉を寄せる。
「…エム?」
「違う。俺はMZDじゃない。黒神だ」
「………黒、神?」
「そ。MZ…あー、Mって呼んでるからMで話を進めるが。Mがこんな世界に固執してっから、したくもねぇ説得しに来たんだよ」
黒神と名乗るそいつは面倒くさそうに言うと一呼吸ついて瞬(またた)いた。
「だから俺は帰らなきゃならなくて、でもだけどっ!帰りたくなんかない、ユーリがいるのにっ…!!」
いきなりエムがいつも通りに戻って私にすがってくる。
「…なのに、お前があんなことを願うから、Mはくだらねぇ殺しのパーティーなんか始めちまった。わかるかユーリ、」
「言うな、言うなっ!!」「言わなきゃ分からねぇだろうが。永遠の命を望むということは、神になりたいと願ったに等しいんだ」
ころころ変わる語り手と同時に、エムの様子もその度に変貌して思わずゾッとする。
……語られた、事実にも。
――私の願ったことが、何につながるのか。どうしてエムがこんなにも壊れてしまったのか。これから、何が起きるのか。