real

□one
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「……だから」
「時間なんかない」
「けど、でも」
『主?』

今度は大きめの声で呼び掛けると、室内で囁かれていた会話はぶつりと切れた。

『入りますよ』

私の言葉に返ってくる無言を肯定と受け取って中に入るが、そこにいるのは彼のみ。

『……主。今、誰とお話を?』
「…黒神」
『……え?』
「今、ここに黒神がきたんだよ」
『………………』
「俺は、もうここにはいられないって」
『それは……あの、主のおっしゃる意味が、分かりません』
「俺は世界に深く関わりすぎた。本来ならこんなに長い間、全てに干渉したり調節を加えたりするべきじゃないんだって、そう言われたんだよ」

彼はひどく狼狽した様子で、助けを求めるような目つきで私をすがるように見上げた。

『…主……いえ、MZD』


久しぶりに彼の名を呼んで、深く息を吸い込む。

事態はどうやら、私の手の届かないところにまで及んでしまったようだ。

『…他に、黒神様はどんなことを?』
「どうしたらいいかは自分で考えろって。でも残された時間は…俺がこれ以上、神として世界に関わる時間は多くは残せない、そんなことは均衡が崩れるって、だから許さないって。黒神は俺と世界を切り離したいんだ、だって俺は、」
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