real
□one
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だんだん早口になっていく彼の肩に手を置いて、落ち着かせようと彼の目を覗き込む。
「影……俺、どうしよう」
いつもの余裕たっぷりな、威厳ある彼はそこにはいなかった。
落ち窪んだような虚ろな目で私を見返して、泣きたいのか笑いたいのかよく分からない顔で呟く。
『私は…』
あの絶望的な孤独を知っている身だからこそ、彼にまたあんな思いはして欲しくなかった。
『私は貴方が選ぶ道を共に歩みます。私は貴方の影ですから』
「………」
『ですが、その前に聞かせて下さい。何故、黒神様は今頃になって貴方の前に現れたか。そして主の考えを』
そうして、ポツリポツリと語られた真実に、表面では平静を装っていたが心の中では耐えきれず慟哭していた。
彼が神としてMZDとして、彼自身として出した決断とまだわずかに残る迷いにそうならざるを得なかった。
『……主。私は、あの時貴方に見つけてもらえたことを心から感謝しています。ですから本当はこんなことに賛成したくはありません』
「………」
『しかし、……感謝しているからこそ、貴方の為にできることを私はやりたい』
――私は、私が彼に対して抱く欲や希望を突き通すよりも、本当に彼自身の為になることを選ぶことにした。