眠り姫は籠の中
□AlL
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ハヤトは正確にリュータを狙っていた。彼の持つ銃が、
暴発さえしなければそれは成し遂げられていただろう。
「よくも、よくも私を惑わせたなぁああっ!」
黒い聖女から異常なほどの殺気が放たれ、その手に持った剣からは彼女の憎しみを現すように炎がほとばしる。
抜刀し、勢いよく駆け出した。
もう、彼女は聞く耳など持ってはいない。
「望み通り終わらせてやる、死んでしまえ、消えろ、殺してや」
「そこまでだ」
彼女の放つ炎の壁へ無理矢理に身を割り込ませて、リュータの前へ躍り出た。
「!!」
驚きと恐怖が一瞬、相手の顔に浮かんですぐ消えた。
間髪入れず突き刺した刀身を彼女の心臓から引き抜いて、肩で大きく息をつく。
目の前で膝をつき、果てていく彼女からの返り血が顔へ無遠慮にかかった。
「六…、ハヤトが、」
リュータの呼び掛けに振り返り、凄惨な光景に一瞬だけ目を伏せる。
「もう、駄目だ」
俺の声が場の空気まで冷やした気がした。聖女の残した炎の熱はまだ止みはしないというのに。