眠り姫は籠の中
□AlL
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――だがその「やっと」は手遅れに近かった。
“俺は奴に散々振り回されていただけだったのか”
そんな思いが頭をよぎって奥歯を噛みしめる。
黒い聖女と対峙するは、戦う意志を持たないリュータ。
何を血迷ったか、彼の歌が辺りに朗々と響き渡る。
そんな彼の後ろで、ハヤトは今までに見たこともない優しさをたたえた目で、
彼の友人であるはずのリュータを殺そうとしていた。
「なんでこんなことに」
何もかも訳が分からない。とにかく止めなくては。
柄に手をやり、一歩踏み出そうとした瞬間。
『バゴン』
なんともいえない、爆発のような破壊音。
それは当然、ハヤトがリュータにめがけて打ち放った弾丸の発射音
では、なかった。
「へ、あ……ぁあ、あぁああ゛あァっ!!」
ほとんどなくなった片腕から大量の血を吹き出させて、ハヤトが叫ぶ。
その傍らに、銃らしきものが静かに落ちた。
「は、ハヤト、お前…!」
「あぁあ、先輩、……っうあ゛ぁ、」
「…私を影から狙っていたのね。卑怯なことを…!」
「違う、そうじゃない、やめろ!!」
最後の叫びは俺から発した。