眠り姫は籠の中

□SounD
4ページ/9ページ

リュータ先輩は予測できる現実から簡単に目を離してしまう人だから、この先死体を見れば見るほど何も出来ない自分を責める。
きっと今でも、戦うことを迷い続けてるんだろう。

…そんなの、僕はとっくに気付いて諦めてるから今更であり虚しくもある。

だけどだからこそ先輩には、逃げてほしくなかった。
逃げれば神様に殺される。それを理由に脅えてしまった彼を奮い立たせたかった。

――何度も頭の中で繰り返した、僕らの出会いのきっかけをもう一度再生する。

僕はあの時みたいに戦ってほしいとは思っていない。
ただ、最後まであがこうとする諦めの悪さを持って欲しかった。
それは武器を所持している・いないに関係ない。

生きられるとわずかな希望を抱いたっていいはずだ。
戦う前から白旗をあげるなんて、僕は絶対に嫌だ。





何かを悟ったのか、先輩の目がほんの少し歪む。
そこに、畏怖、懐古、恐れ、それらが一瞬で浮き上がり消えていくのが手にとるように分かった。



…すみません、先輩。僕はもう貴方の知ってる僕じゃないんです。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ