短編小説

□*Sweet Dream*
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僕たちはキスをしながら、互いの唇にクリームを乗せて、食べさせ合った。
擦れ合う肌がホイップにまみれて、摩擦のほとんどない、滑るような感覚が気持ちいい。

クリームのプールは真っ白で、とてもきれいだ。
僕たちはその中で戯れるように、揺れて漂う。
キスに夢中になっていると、チョコレートが沸き出している噴水にたどりついた。
カカオのほろ苦い香りと、ビターな色合いに、僕たちのからだは濡れる。
それを浴びながら唇と重ねると、深いダークな味に、またその味にとろけてしまう。

甘いのは、そのチョコレートのせいなのか、互いのキスのせいなのか分からない。
──ただ、世界は甘くて、いい匂いが漂っていて、幸せなだけだ。

白いクリームの真ん中で浮かんでいる籠の中には、新鮮なフルーツが山盛りに飾られていて、葡萄の房から一粒をちぎって君の口に運ぶと、相手は苺を僕の舌に乗せた。
酸味と甘みの絶妙なバランスに、思わず唸ってしまう。

あのうす茶色の山はスポンジで、その隣にあるのがクッキーとビスケットで出来た小さな家だ。
ひらひらと舞っている蝶々は、ゼリービーンズ。
あの低い羽音を響かせて、色とりどりのグミで出来た花々を飛び回っているミツバチは、本当にハチミツで出来ていた。

自分を取り巻いている世界は、幸せな甘い香りに満たされていて、その中で一番甘いのは、もちろん、──君だった。

プラチナブロンドが輝き、うす水色の瞳は美しく、白い肌に、甘いホイップのデコレートを滴らせて、身を擦り寄せてくる。

あまりにも世界が幸せに満ちていて、満足げなため息が漏れた──



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