シリーズ小説
□【Tea houseシリーズ】
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「……もうすぐだね、ドラコ」
いろんな意味を込めてそう囁く。
「なにが?」
「もうすぐ春がやってくるよね」
僕を見て頷く薄青い瞳はとても柔らかくて、なにかの輝きに満ちている。
互いに分かっているのに、分かっていないフリがとてもいい。
グッとくる。
見詰めあい、微笑みあって、笑いたくなってくるこの気持ち。
甘い気配に包まれて、僕はそっと告げた。
「三月の終わりは復活祭だよね。ドラコはイースターホリデーはどうするの?こちらじゃあたくさんのイベントがあって楽しいよ。ぜひおいでよ。休暇はあるの?」
「もちろんあるさ。4日間くらいだけど」
「あれが終わると冬時間が夏時間に変わるんだ、イギリスでは」
「へぇー……、そうなんだ」
「街もきれいにエッグで飾られるし、イースターセールとかもあるよ。気候もいいし、きっと君も気に入ると思うよ」
「どうしようか……」
「ぜひおいでよ」
誘うとまたドラコははにかむように微笑んだ。ほほは薄っすらとピンク色だ。
それを見詰めて、僕も目を細めた。
テーブルには小さなサンドイッチやタルトやケーキと、たっぷりのお茶。
暖かな湯気の向こうで君がコクリと頷くのを見て、ふいに僕は余計なお世話かもしれないけれど、こう思ったんだ。
『君を幸せにしたい』なんて。
迷惑かな?
どうかな?
■END■