シリーズ小説
□【ふたりは〜シリーズ】
5ページ/13ページ
やがて食事を食べ終えると、ハリーは早速靴も、靴下も全部脱いで、ズボンのすそを折り曲げて、湖の中へと足を入れたりし始める。
「うわーっ、冷たいな!」
とか悲鳴のような声を出しているが、それが逆に楽しいらしい。
「ドラコもする?」
と聞いてきたが、彼は首を振った。
(どおりで、時々ハリーのズボンの折り目が、ぐちゃぐちゃになっているのはこのせいか)
と納得する。
ドラコは草の上にそのまま寝転んでうつぶせになり、ハリーが描いた『傑作の落書きノート』を見ていた。
黒い頭の棒人間が、偉そうに鍋の前で講義をしている。きっとスネイプ先生だ。
「ぶはっ!」
たまらずドラコは噴出した。
(ひぃーっ、おかしすぎだ!)
肩を震わせ、笑いすぎて涙ぐむほどだ。
「そんなにおもしろい?」
ハリーはとなりに寝転んで、ノートを覗き込んでくる。
「ああ、この棒人間が動いている所もツボだ。このウゴウゴしている感じがなんとも味があって、大笑いするよ。君は才能があるんじゃないのか、ハリー!」
「棒人間を描く才能があってもなー……」
とハリーは情けないような、微妙な顔で笑う。
「でも僕はおもしろいし好きだぞ、これ!」
「じゃあさ、毎日描いて、ふくろうに持たせて君に届けようか?」
「ああ、ぜひそうしてくれ!これが毎朝見れるのだったら、つまらない授業がある日でも、朝から楽しく過ごせそうだ」
ドラコはハリーを見て、ご機嫌で目を細めてニコニコと笑いかけてきた。
「……ドラコ、君って本当はそんな笑顔ができるんだ!」
ハリーはドラコの顔を見つめて、しみじみとした声で言う。
「なに当たり前のことを聞いてくるんだ、お前は?」
キョトンとした顔でドラコは答えた。
「いや……、いつも君は僕の前では、怒った顔ばかりしていたからね」
「だって喧嘩するときは笑わないのは当然のことだ」
「本当、喧嘩ばかりしていたよね。君が絡んでくるから」
少し意地の悪い顔をしてハリーが言う。
「まあね、日課みたいなもんだったし。」
「なんで毎回喧嘩をしかけてきたの?」
「―――さぁ、もう理由なんかないんじゃないのか。毎日の惰性のようなもんで、最初の原因なんかもう忘れたよ。」
どうでもいいように、ドラコは答えて寝返り、空を見上げた。
空は青くて、雲の流れが速い。
とても気持ちがよかった。
ハリーもドラコに倣って、上を見る。
「ああ……、今日は雲の流れが速いね」
気持ちよさそうな声でハリーが言った。
ドラコはその言葉を聞き、ハリーが自分と偶然同じことを思っていたことに、嬉しくなる。
(そうだ……。そうなんだ……)
と思う。
(僕は本当は何よりもともだちが欲しかった。恋人でも、子分でもなく、こういう風にたわいのない話をして笑い、いっしょに寝っ転がったりする、気の置けないともだちが、とても欲しかったんだ……)
そうしてドラコは満足そうに、目を細めたのだった。
■NEXT■