シリーズ小説

□【ふたりは〜シリーズ】
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やがて食事を食べ終えると、ハリーは早速靴も、靴下も全部脱いで、ズボンのすそを折り曲げて、湖の中へと足を入れたりし始める。


「うわーっ、冷たいな!」
とか悲鳴のような声を出しているが、それが逆に楽しいらしい。


「ドラコもする?」
と聞いてきたが、彼は首を振った。


(どおりで、時々ハリーのズボンの折り目が、ぐちゃぐちゃになっているのはこのせいか)
と納得する。


ドラコは草の上にそのまま寝転んでうつぶせになり、ハリーが描いた『傑作の落書きノート』を見ていた。

黒い頭の棒人間が、偉そうに鍋の前で講義をしている。きっとスネイプ先生だ。



「ぶはっ!」
たまらずドラコは噴出した。

(ひぃーっ、おかしすぎだ!)
肩を震わせ、笑いすぎて涙ぐむほどだ。



「そんなにおもしろい?」
ハリーはとなりに寝転んで、ノートを覗き込んでくる。

「ああ、この棒人間が動いている所もツボだ。このウゴウゴしている感じがなんとも味があって、大笑いするよ。君は才能があるんじゃないのか、ハリー!」

「棒人間を描く才能があってもなー……」
とハリーは情けないような、微妙な顔で笑う。



「でも僕はおもしろいし好きだぞ、これ!」

「じゃあさ、毎日描いて、ふくろうに持たせて君に届けようか?」

「ああ、ぜひそうしてくれ!これが毎朝見れるのだったら、つまらない授業がある日でも、朝から楽しく過ごせそうだ」
ドラコはハリーを見て、ご機嫌で目を細めてニコニコと笑いかけてきた。



「……ドラコ、君って本当はそんな笑顔ができるんだ!」
ハリーはドラコの顔を見つめて、しみじみとした声で言う。


「なに当たり前のことを聞いてくるんだ、お前は?」
キョトンとした顔でドラコは答えた。


「いや……、いつも君は僕の前では、怒った顔ばかりしていたからね」

「だって喧嘩するときは笑わないのは当然のことだ」

「本当、喧嘩ばかりしていたよね。君が絡んでくるから」
少し意地の悪い顔をしてハリーが言う。


「まあね、日課みたいなもんだったし。」

「なんで毎回喧嘩をしかけてきたの?」

「―――さぁ、もう理由なんかないんじゃないのか。毎日の惰性のようなもんで、最初の原因なんかもう忘れたよ。」
どうでもいいように、ドラコは答えて寝返り、空を見上げた。



空は青くて、雲の流れが速い。
とても気持ちがよかった。


ハリーもドラコに倣って、上を見る。



「ああ……、今日は雲の流れが速いね」
気持ちよさそうな声でハリーが言った。



ドラコはその言葉を聞き、ハリーが自分と偶然同じことを思っていたことに、嬉しくなる。



(そうだ……。そうなんだ……)
と思う。



(僕は本当は何よりもともだちが欲しかった。恋人でも、子分でもなく、こういう風にたわいのない話をして笑い、いっしょに寝っ転がったりする、気の置けないともだちが、とても欲しかったんだ……)


そうしてドラコは満足そうに、目を細めたのだった。


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