シリーズ小説

□【ふたりは〜シリーズ】
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羽ペンの先を指で押したり遊びながら、ハリーは気軽に尋ねてくる。

「ドラコ、昼ごはんはどうする?」

もう呼び名もファーストネームで呼びあうことに、ふたりとも別に抵抗なかった。


「ああ、遅れたけど今から食べに行くけど、なぜだ?」

「僕はあんまり行きたくないなー。ロンとハーマイオニーの間で食べるのも気が引けるし、ひとりでポツリと食べてもおいしくないしなー。君のいるスリザリンテーブルで食べちゃダメかな?」

「うーん………、やっばり変な噂が立つから、それは止めておいたほうがいいぞ。君たちの3人の友情にヒビが入ったとか、―――っていうか、関係のない僕までとばっちりを食って悪者にされそうだらか、絶対に止めてくれ!」

ハッという感じでドラコは慌てて頭を振った。


「僕がスリザリンの狡猾さで君をたらしこんだとか、きっと変な言われるから、絶対に来ないでくれっ!」

「君は冷たい!ああ、本当に冷たいぞ!!やっぱり、僕はひとりぽっちで、誰からも相手にされないんだ」

ハリーがじろっとにらんで、ふて腐れた顔になる。



「そんなことはないさ。君は人気者じゃないか、ハリー。君と友達や知り合いになりたいやつなんか、山ほどいるさ。安心しろ」

「僕は誰とでも友達になりたいわけじゃない。それに人気者っていうのはとてもいやだし、怖い。持ち上げたと思ったら、すぐ風向きが変わるとその上げた手を一斉に引っ込められて、背中をしたたか打つような、手ひどい裏切りに何度もあったよ。僕は一度もそんなことを望んでもいないのに、いつも何かあると担がれる。ひどいと思わないか、ドラコ?」

「―――それはひどいね」

以前、ハリーは人気者を鼻にかけているとばかり思っていたドラコは、彼の本音を聞き、自分の浅はかさに少し気まずい気分になる。



「友達は自分が選んだ人がいい」
そういってドラコに笑いかけてくる。


ドラコは心臓が飛び上がり、真っ赤になりそうな顔を、必死のポーカーフェイスでカバーした。

早まる動悸を必死で押さえ込みながら、かすかに笑い返した。


「それはありがたいね」

「でも僕の友達は、僕がひとりで食事をしろって言うし、あー、冷たい」

「君にはロンたちがいなくても、グリフィンドールにはシェーマスやディーンがいるだろ?彼らと昼食を取ったらどうだい?」

「いやだ。僕は君と食べたい」

ドラコは大げさにため息をつく。
「ハリー、君はひどくわがままな性格なんだな、知らなかったよ」


「そりゃそうだよ。そうでなきゃ、あんなにも意地の悪い君と、毎日やりあったりしてないよ」

「確かになー」
別段怒るふうでもなく、ふむふむという感じでドラコも頷く。



少し考えている素振りで、やがてドラコは立ち上がると、ハリーの肩をポンとたたいた。

「ここで待ってろ。君は大広間に行きたくないんだろ?僕が適当なものを見繕って持ってくるから、校庭のどこかの木蔭でいっしょに食べよう」

「湖のそばがいいと思う」

「あそこまで食べ物を抱えて歩くのか?結構な距離だぞ」


「ああ、荷物なら僕が持つよ」

「持つよって気軽に言うけど、昼休みは1時間しかないのに、その往復で終りそうだよ」
げんなりした顔でドラコが答えた。


「なんだったら、午後の授業はエスケープする?」

「まさかっ!」

「優等生のフリだけするんじゃなかったの?真面目だね、ドラコは」
笑ってハリーはからかう。


「僕は昼ごはんごときで授業を休んだりしない主義なんでねっ!」

むっとした顔で、ハリーの高慢な鼻を引っ張った。


「いてて……」
ハリーは派手に痛がるそぶりを見せる。

もちろんドラコも怒っているふりだけだ。



大広間に向かうドラコの背にハリーは
「あっ、ミートパイは絶対に食べたいから、持って来てね」
とリクエストまでする始末だ。

「はいはい」
とドラコは手を上げて合図して、ドアから消えた。


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