シリーズ小説

□【ふたりは〜シリーズ】
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「あれは何、ハリー?あの魚は何なんだ?」

「なんだと言われても近づいてみないと。でも僕は腰が痛くて……あいたた……」

「何、年寄りみたいなこと言っているんだ、もう!」

「キミはいいよ。僕というクッションがあったから痛くはなかったと思うけど、僕は地面で容赦なく腰を打ったんだぞ」

「いいから!早く、早く!」

ドラコに腕を引っ張られて、ハリーは渋々立ち上がり、その暴れている魚に近づいた。



その魚は体長が40cmほどで、細長くからだ全体に黒い斑点があり、全身
が銀色にピカピカと輝いていた。

「この魚は何、ハリー?」

「あ―――っと、……これはニジマスだよ」

「食べれるのか?」

「うん、おいしいよ。バター焼きや燻製や塩焼きにしてもイケるよ」

「じゃあ食べよう!今すぐ食べよう、ハリー!!」
嬉しそうにドラコは言う。



「えっ!でも僕はまだ釣りをしてないんだけど?」

「いいだろ!食べたい!自分の釣った魚を食べたいんだ。お願いだ。僕たちはともだちだろ!」

ドラコは草の上で盛大に跳ね回っている魚を指差して、ハリーをふり返り笑いかけてきた。


「まったく、『ともだち』と言えばなんでも許されると思ってない、ドラコは?」

「そんなことない!でも食べたい!作ってくれ!僕は塩焼きがいい!」

邪気のない笑顔で、味付けのリクエストまでする始末だ。


「え゛ーっ、全部僕がするの?」

「そうそう!ああでも、火を起こすのは僕がやるから」

「じゃあ……、魚の仕込みは僕にしろってことかな……?」

「うん!ハリー、ありがとう!」



「ありがとう」と満面の笑みでそう言われたら、もうハリーはお手上げだ。

ドラコは自分では気づいていないみたいだけれど、とてもわがままな性格だった。

でも、それが彼の魅力だから仕方がない。



ハリーはため息をつくを肩をすぼめた。

「OK、分かったよ。とびきりおいしく調理するから」

ドラコが笑ってくれるなら、ちょっとした苦労など仕方ないことだ。



ハリーが暴れている魚を持ち上げると、それを見て
「僕が釣ったんだ!」
と嬉しそうにドラコは何度も言う。


「ああ、キミは才能があるよ」
笑ってハリーは答えた。


ドラコは喜びと興奮で顔を上気させて、ハリーを見つめる。


「僕はなんて運がいいんだ!ハリー、キミとともだちになれたことが、何よりも嬉しい。本当に心から!」


ドラコはただハリーの顔を見て笑った。


それだけで、ハリーはとても幸せな気分になった。

「もちろん僕もだよ、ドラコ」





くすぐったいような、フワフワした感じ。


ふたりが共有するそこには、やさしい時間が流れていた。



―――ふたりはともだち。


これからも、ともだち。


ずっと、ずっと、
   ふたりはともだちだ。


■END■
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