短編小説

□*Coffee Break*
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最初、この場所で彼を見たとき、ドラコは息が止まりそうになった。

それまで、彼が同じこの魔法省内にいるなんて、思ってもいなかったからだ。


ドラコが7年生の頃、もう相手はホグワーツに戻らずに、そのまま闇払い本部に職を得たことを噂では知っていたが、まさかここで再会するなんて思っていないことだった。


「……ポッター、どうしてここにいるんだ?」
などと、驚いた顔のまま尋ねる。

「それはこっちのセリフだよ。なんで君こそが、魔法省にいるんだよ、マルフォイ?お貴族様の優雅な職場見学か?」

相手はクスリと笑い、からかった。


「失敬だな。僕は書記官として、ここに就職したんだ」

ムッとした顔で反論すると、ハリーは少し驚いたように目を見開いた。


「――えっ、いつから?」

「卒業してすぐだ。もう半年くらいにはなる」

「へぇー……、じゃあ、僕のほうが先輩なんだ」

「何が先輩だ、偉そうに!」

「だって、僕は魔法省で働きだして、かれこれもう1年は過ぎているからな。やっぱり、先輩だろ」
フフンと高飛車に鼻を鳴らす。


「自分の上司でもない癖に、何を先輩風を吹かしているんだ、いい加減にしろ!」

「でも、先に就職して働いていたのは事実だし、本当のことだろ。――まあ、何か分からないことがあったら、気軽に聞いてきてもいいよ。僕のほうが、一年先輩だし。いろいろアドバイスが出来るし」

などと、ドラコの前で偉ぶって胸をそらした途端、ハリーは後ろから後頭部をガツンと殴られてしまった。


驚き振り向くと、ハリーの部署イチ怖い先輩が立っている。

背丈が恐ろしく高い、固めの髪が少し逆立っていて、目元がきついのが特徴的だ。


ドラコは見覚えがある相手をまじまじと見つめて、やがて思い当たったのか名前を叫んだ。

「マーカス先輩!」

名前を呼ばれて、相手の口元が緩むと相好が崩れて、途端に人なつっこい顔になる。


黒髪のすっきりとした目鼻立ちのホリが深い横顔は、ドラコが所属していたクィディッチのスリザリンチームの元キャプテンだった相手だ。

「よぅ、元気だったか、マルフォイ」

笑いながら、手を上げて挨拶を返すと、そのままハリーの肩をギュッと掴んだ。


その強さに「イテテテ……」と、ハリーは声を上げた。

「センパイ、やめて下さいよ」

顔を近づけて、そのついでのように、また頭をゴツンと殴った。


「イテー!暴力反対!パワハラで、訴えますよ、先輩!」

ハリーは顔をしかめて抗議する。


「なーにが、パワハラだ。いい加減にしろ。言っても報告書のひとつもまともに仕上げれない、出来の悪い後輩には、口で言っても分からないようだから、体で教えているんだ。お前が闇払いの部署に入って、どれくらいがたつんだ?」

「一年ですが」

『それが何か?』とばかりに、けんか腰に反論すると、また音がするほど容赦なく殴られた。


「デーーーッ!!」

殴られた頭を抱えながら、ハリーは食ってかかる。


「いーかげんにして下さいよ、先輩。たたでさえ先輩はタッパがあるんだから、そのでっかい手で殴られるとメチャクチャ痛いんですよ」

あー、イテテと大げさすぎるほど、痛がる素振りをする。


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