短編小説
□*楽しい休日の過ごし方*
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鍵が回る音がして、ドアが開く。
一陣の涼しい風が舞い込んで、白い軽めのコートを着た人物が部屋に入ってきた。
僕は寝転がっていたソファーから急いで立ち上がると、相手を出迎えた。
「お帰り。思ったより早かったね」
「ん。休日出勤だったから、仕事が仕上がった時点で帰してもらえたんだ。せっかくの休みだったのに、外出しなかったのか?見たい映画があるって今朝言っていたのに」
「ああ、もう面倒になってやめた」
「ゴメン。あの映画はふたりで行く予定だったから、余計な気を回してしまって」
僕は気軽に首を横に振る。
「別にいいよ。今度の日曜日に行こう。今日は一日このネコと遊んでいたんだよ。ドラコがいないと、このコは僕に甘えてくるからね。いつもは君にべったりなのに」
もう気まぐれなネコはあっさりと僕の手をすり抜けて、ドラコの元へと歩いていく。
長くて細い優美なからだをドラコの足元に擦り付けた。
ドラコも機嫌よさそうに目を細めて、その首元をなでると、ニャーと甘い声で鳴く。
現金なもんだ。
いつも餌をやるのも、お気に入りの場所を掃除するのも、ツメの手入れもするのも僕なのに、ドラコのほうが好きなんだ。
……まあ僕だって、猫よりドラコのほうが好きなので、敏感な相手はそれに気付いているから、そんな扱いになるのかもしれない。
お互い様というトコロだろうか。
僕もドラコに近づき相手のほほにお帰りのキスをすると、相手の両手に下げられている荷物を受け取った。
「中に夕食用のデリカが入っている。スモークサーモンとかマリネとかビーンズスープとチキンの照り焼きを買ってきたんだ。そっちの袋は新作の映画のDVDだ。早めに夕食を済ませて、ゆっくり過ごそう」
「いいね」
ニッコリと微笑むと、ドラコも口の端を上に上げる。
自分のせいで、僕との休日が流れてしまったことを、これで帳消しにしたいらしい。
「疲れただろ。座ってて。あとは僕が用意するから」
「悪いな」
「別にいいよ」
あまり広くはないけれど、そのぷん居心地がいい部屋の隅にあるキッチンへと入る。
ドラコは今まで僕が座っていたソファーに腰を下ろした。
コートを脱ぎ、ジャケットを背もたれに引っ掛けると、ネクタイを緩める。
僕が飲みかけていたペリエに口を付けて、満足そうなため息をつきつつ、猫を抱き上げてそのままそこに寝転がる。
きれいで癖のない短めの髪がふわりと広がった。
ご機嫌な様子で猫に話し掛け始める。
そんなリラックスした姿を見て、僕はとても幸せを感じる。
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