短編小説

□*Angel face *
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*夕立の午後* 

プラチナに近い髪は濡れて、色の濃い金色の髪に変化して、突然降り出した雨にふたりはずぶ濡れになりました。

「だからこんな曇り空の天気の日に、箒での遠出はイヤだったんだ」と文句を言うドラコ。

ハリーは「ごめん」と謝りながら隣を振り返り、相手を気遣おうとした途端、慌ててぎこちなく視線を外します。

ドラコのシャツが湿って、半分肌に張り付いているからです。

ぐっしょりと濡れた服は、相手の細い体のラインを浮かび上がらせます。

ハリーは小さく咳をしました。

振り向くドラコのほほからあごのラインに、雨の滴が一筋流れていきます。

不思議そうに見詰めるドラコの灰色の瞳が、まるで天使のようです。 

――ずっとふたりは立ち尽くしています。

雨宿りのための軒下から動けません。

だって雨はまだ降り続いているからです。
 
 
*アドバイス*
 
ことある事に「愛に勝るものは何ない。自分の心に素直になって」と、わたしは彼に言い続けていました。
 
クリスマスに近い夜に、突然怒ったり落ち込んだりして悩んでいる彼に、再び「素直になって。じゃないとあなたは一生後悔するわよ」とアドバイスをします。
 
何かを深く考え、ゆっくりとうなづくドラコ。
 
暖炉の暖かなオレンジの炎をほほに受けて、不安げなそれでいて何かを決意するドラコの横顔は、まるで天使のようです。 

 
*恋人の定義* 

恋人は好きな者どおしの思いが通じ合ったことを言います。

ドラコはどうなのでしょうか?

 
バレンタインデーには今年もたくさんのチョコが、ドラコの元にも届きました。
 
甘いもの好きのドラコでも辟易するほどでしたが、結構な量を一ヶ月かけて全部食べました。

そのプレゼントに託された思いの一つ一つに答えることは出来なくても、せめてものそれが照れ屋で意地っ張りな彼なりの、精一杯のやさしさなのです。 

でもたったひとつだけ手をつけていない、大切に枕元に置いているギフトボックスがありました。

メッセージカードには「H」とかしかなかったけれど、それで十分でした。
 
ホワイトデーにはお返しをしなければなりません。

彼は別段、お菓子や物を欲しがっている様子はありません。

「僕の欲しいものはたったひとつなんだ」とつぶやき、ハリーは俯き頬を染めます。

「困ったな……」とドラコは考えます。
 

消灯後、天窓を見上げて「どうしよう」と考えるドラコの瞳には星が映りこみ瞬いて、まるで天使のようです。

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