シリーズ小説

□【Marriageシリーズ】
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「気に入らないの?せっかく買ってきたのに。だったらこれなら、どうかな」

またバックの中からリンゴを「美味しかったから」と言いつつ、袋にも入っていない丸のままのを5、6個取り出す。

テーブルの上から転がり落ちそうになるのを慌てて受け止めて戻しながら、ドラコは首をひねる。

(……なんで、ニューヨークのお土産にリンゴ?どこにでもあるぞ、こんなものは?それともビックアップルとかけているのか?)

低く唸る。


次に「おいしい」という同じ意見で、緑の葉がついたカブが1束出てきた。

果物、野菜ときたから今度は肉かと思ったら案の定ビーフジャキーがバックから取り出される。

その次はどこにでもありそうなM&Mのチョコバーの詰め合わせの大袋に、自由の女神がノックするてっぺんに付いた扱いにくそうなボールペン。

ホグワーツに向う汽車とどこか似ているという理由で買ったという列車の模型。

ハリーは得意そうに、「魔法ではなく、電池で動くんだ」と嬉しそうだ。

「ああそうか。よかったな……」

力なくドラコはハハハ…と笑った。


「ハリー……、君はいったいどこへ出張してたんだ、本当は?」

「見たら分かるだろ、アメリカだ」

あっさりと答える姿を見て、ドラコはやれやれと首を振る。

あまりのセンスのなさに、呆れるのを通り越して頭痛がしてきた。


「あと、これは一ヶ月ぶりの再会を祝して、君に」

バックの一番下から取りだしたのは薔薇のブーケだった。

ハリーはご機嫌な顔で相手に差し出す。

やっとまともなプレゼントだと思ったが、真っ赤なそれはどこかへたっている感じがした。

「なんだか、つぶれかけていないか?」

困った顔で受け取りつつ尋ねてみる。


「ああっと、そういえば一番最初に買ったから、バックの底に入っていたんだ。だからグチュッとなっちゃった」

バツが悪そうに頭を掻く。

ドラコはついていけなくて、もうグチュでもグチャでも勝手にしてくれと、うんざりと思った。


テーブルの上にはゴチャゴチャとしたものがところ狭しと並び、まったく統一感がなくて、別の意味で素晴らしい光景になっている。

これが全部自分へのお土産だとしたら、自分というものは相手にとったらどういう風に見られているのかと、一度真剣に問い詰めたくなってしまった。


「―――そして最後にこれが、僕の君へのとっておきのプレゼント」

そう言って差し出されたのは、水色の小箱に白いリボンのかかったものだった。

「開けてみて」とせっつかれて開くと、中から出てきたのはシルバーのペアリングだった。


ドラコは眉間にしわを寄せて、疑わしそうに相手を見る。

「いったいこれはどこのおもちゃ屋で見つけてきたんだ?トイザラすか?フリーマーケットか?」

「ひっ……ひどいぞドラコ。ちゃんとした本物だよ。―――そして、その2つある指輪のひとつを君に受け取って欲しい」

唐突に腕を差し出すと、がっしりとドラコの手を握ってきた。


「愛している」

告白のついでのようにドサクサに紛れて、少し小さめのリングのほうをドラコの指にはめようとする。



「だーーーーーーっ!!いっ、いったい、どうするつもりだ、ハリー!!」

ドラコはらしからぬ大声を上げて、その指輪も箱ごと振り払った。


「せっかくのプロポーズなのに、ひどいじゃなか。何で振り払うのさ!」

「お前、場面とかムードとか雰囲気とかがあるだろ?!なんだって、こんなついでのように、リングをはめようとするんだ?」

「だからふざけてないって。この指輪はメチャクチャ高かったんだからね。なんだか知らないけど、有名なジュエリーショップの本店がニューヨークの五番街にあるらしくて、わざわざ出かけてやっとの思いで買ったんだから。しかし、あんなにリングが高価だとは思わなかったよ」

「―――五番街?」

「ああ、マグル界のことは君は疎いから知らないと思うけど、超高級店が並んでいる通りだよ。おかげで僕の貯金は底がつきそうだよ」


よくよく見ると確かにそれは本物らしい輝きを放っていた。

「いくら高価なものでも、本物でも、ついでのように渡すなんて……」

「だから、ついでじゃなくて、僕は君とずっと離れていてとても淋しかったから、最初に君に会ったらすぐに渡そうと思っていたんだ。ずっとずっと前から決めていたのに」

恨みがましそうな瞳で睨んでくる。


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