シリーズ小説

□【Truffleシリーズ】
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【Truffle】


薄々は気付いていたのだけれど、ドラコはグルメな美食家に違いなかった。




雪が降りそうな冬のある日、ドラコはマグル界に住んでいるハリーの元を訪れた。

それはホグワーツを卒業してからの久しぶりの再会だった。


ドラコは上質なカシミアのコートの下に黒のスーツ姿で、ぎこちなく挨拶をした。

雑踏の中に立つ彼はいささかフォーマルすぎて、きっと魔法界とコチラとの違いのさじ加減が分からず、そんな格好をしてきたのだろう。

ドラコはその正装に近い服装のせいで、道行く人にじろじろと無遠慮に眺められて、居心地が悪そうに見える。


ハリーは予想もしなかった相手のすらりとした立ち姿に、一瞬で目を奪われてしまった。

背が伸び成長していたけれど、整った顔立ちはむかしのままだ。


癖のない銀色に近いブロンド。

少し伸ばし気味の前髪から、ほとんどシルバーに近い瞳がじっとこちらを見ている。


卒業と同時にこちらの世界に住むようになって数年がたち、魔法界はもう自分には遠い存在で、日々の忙しさに忘れかけていた。

もちろんドラコのことなど、今まで思い出しもしない存在だったはずだ。


「マグルのビジネスのことで、君に尋ねたいことがある。すまないが、少し時間をいただけないだろうか?」

そう問いかけてくる声は滑らかで、心地よく耳に響いてくる。

丁寧な口調で尋ねる相手からは、自分との過去の確執の片鱗はどこにもなかった。


(断られるかもしれない)という不安気に揺れる瞳は、冬の空と同じくらいに青い光を冴え冴えと映している。

プライドが高く気が強いくせに、どこか気弱なところが見え隠れするのが、いかにも彼らしかった。


ハリーは気付かれないように、ふっと小さな笑みを漏らす。

自分の目の前に立つ相手がとても好ましく映ったからだ。


「ああ、別にかまわないけど」

笑みを浮かべ了解の言葉を口にすると、緊張が解かれたようにドラコも柔らかな笑みを浮かべる。


再会の意味で手を差し出すと、ドラコは躊躇なくそれを握った。

触れると長く形のいい指は思ったより柔らかくすべすべして触り心地がよかった。


心臓が倍速に跳ね上がるのを感じた。

ひどく焦り耳まで真っ赤になりそうなのを必死で押しとどめ、普段どおりの何気ない表情を作ると、相手の話を聞くために手近な喫茶店へ案内したのが最初だった。



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