シリーズ小説

□【Like a dogシリーズ】
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それでその結果が、目の前にいる『これ』だったとは……。


ドラコはハリーのあからさまで思いっきり分かりやすい行動に、眩暈がしているという寸法だ。


「おい、ハリー!」

呼びかけると茶色の犬は小さなからだのまま、パタパタとふっさりとした尻尾を振る。


「じゃあ、ちび」

また子犬は分かったような、分かってないような表情のまま、ドラコの顔を見て輝く瞳で尻尾を振り続けているだけだ。


「まったく仕方がないなー」
と口では言いながら、まんざらでもないドラコはベッドに横たわり、犬を自分の胸の上に乗せた。


「本当にお前はおっちょこちょいだな。ちゃんと人の話を最後まで聞かずに行動に移す癖は直したほうがいいぞ。―――んっ?」

犬と目と目を合わせたまま、ドラコは注意する。


「僕の犬の名前は『ちび』だけど、からだはチビじゃないぞ。かなりの大型犬だ。多分体重ならば、僕より重たいくらい大きな犬なんだ。飼い始めが子犬だったから、単純にちびと名前を付けただけで、今では下手すればポニーくらいの大きな犬に成長してるというのに、なんだこのかわいいサイズは!」

クスクスとドラコは上機嫌で笑い転げた。


胸に乗っているのは、猫と同じくらいの小さな愛玩犬だったからだ。

「でも犬好きの僕としては、こんな小さなサイズの犬も一度は飼ってみたかったんだ」

ふわふわの頭をなでて、その耳を指先でくすぐると、子犬は嬉しそうに盛大に尻尾をブンブンと振ってドラコの鼻先を舐める。


「くすぐったいだろ。そんなに舐めるな」

そう言いながらもドラコは、その犬を自分の上から離そうとはしないばかりか、目を細めて相手の舌をちょんとつついた。


「ああ、顔もからだも小さいと、舌まで本当に小さいや。小さくて丸い舌をちょっと出しているところなんか、本当にぬいぐるみ顔負けくらい愛嬌があるぞ、ポッター。お前にしては、上出来な魔法を使ったな」

ドラコはその頭といわず、背中もお腹も手を伸ばして、盛大に撫でまくる。


犬は嬉しさにブルブルとからだを震わせた。

「僕のちびときたらやたらと大きくて、一度舐められただけで顔の半分はヨダレでベタベタになって、あれだけは勘弁してもらいたかったけれど、小型犬に舐められるとこんなにくすぐったくって、気持ちいいものなのか。知らなかったなー……」

ドラコは笑ってばかりだ。


30分くらい犬とじゃれあって満足したドラコは、それをベッドから下ろした。

「さあ、もう夜遅くなるから、お前は自分の寮へ帰ったほうがいい」

そう言って帰そうしたが、相手はちっとも言うことを聞かずに、逆にジャンプして床からドラコの横に戻ってくると、座り込み枕元にちんまりと丸くなった。


「ここで寝るつもりなのか?」

ぱたぱたとふわふわの尻尾が揺れる。

そのふさふさとした誘惑にドラコは我慢できるはずがなかった。


はっきり言って、ちびと離れてもう1ヶ月以上だ。ここは学校だし、寮だからと、じっと我慢はしていたけれど、あの柔らかい毛並みには勝てる訳がない。

ドラコは物心ついたときから、犬といっしょに生活をしていたのだ。

留守番で一人ぽっちの夜も、広い食堂でポツリと夕食をとるときにも、いつも隣には犬がいたから寂しくはなかったし、それが心の支えだった。


「もう、この知能犯めっ!!」

そう一応怒った顔はしたものの、ドラコはぎゅっと犬を抱きしめたまま、自分の布団の中へといっしょにもぐりこむ。


「犬の使い魔なんかこのホグワーツでは禁止だし、勝手に動物もどきの術を使うことも禁止事項だぞ。しかも僕は違反者を厳格に注意する監督生だ。だけど―――だけど!!」

ドラコはじぃーっと黒い濡れた瞳を見つめて、ぎゅっと相手を抱きしめた。


「ああ、好きだっ!この世にこんなかわいい生き物なんかいるものかっ!もうめちゃくちゃかわいいっ!!」

ドラコは幸せいっぱいの顔をする。

犬好きの彼はどんな犬でもメロメロになってしまう。


それに答えるように、子犬は盛大にドラコの顔中を舐めまくった。

ドラコはくすぐったそうにしたが、逃げようとはせず、それを上機嫌で受け止めながら、その背中をなでた。


変身をしているが元の姿は誰なのか、ドラコはすっぽりと抜け落ちたように、肝心のことを忘れているようだ。

そのかわいすぎる外見にすっかり騙されている。


――そしてその夜、ドラコはその子犬を胸に抱きしめたまま、幸せな眠りへと落ちていったのだった。


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