シリーズ小説

□【Like a dogシリーズ】
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3.


ノックの音がしてドアを開けると、満面の笑みでハリーが立っていた。

「来たよ!」
嬉しそうな声で笑いかけてくる。


「―――しっ」

そう低く言うとハリーの手を取り、強引に中へと押し込み内側へとドアを閉めた。

パタンという音とともに、部屋はふたりきりになる。


ドラコは薄青い瞳で早口なまま、小さな声で注意を促した。

「ここは石造りだから結構、廊下の声は響くんだ。特に消灯後に見つかると、監督生の僕が規則を破ったことになるから、他の寮生に示しがつかなくなる。だから静かに入って来いよ」

手を引っ張られた弾みでドラコの胸元に額をぶつけて、顔をうずめるような格好になったままのハリーは、ご機嫌に「分かった」と短く答える。


身を寄せると相手からは心地のいいシャボンの匂いがした。

夕食のあと消灯までの自由時間に風呂に入るのは当たり前な行為なのに、なぜか自分のために入ってくれたような変な錯覚をしてしまいそうだ。


「でもさ、部屋を訪ねるときはノックするのがマナーで、それが普通だと思ったんだ」

「そんなことは構わない」

「―――構わないって?」

「ノックをしなくても勝手に部屋に入ってきてもいいってことだ」

「いいの?」

コクリと頷く。


「消灯後に鍵は開けておくから、勝手に入ってきてもいい」

「……うわぁ、それって、まるで深夜の恋人たちの密やかな逢瀬って感じだよね」

嬉しさのあまり思ったことを口にした途端、パシリという小気味いい音とともにハリーの後頭部に激痛が走った。


「わっ!!いきなり頭を叩かないでよ!ひどいなぁ」

グーで殴られないだけ少しはマシなのかもしれないが、やはり叩かれると痛い。

ジンジンと響いてくる頭の後ろを擦りながら文句を言った。


「ひどいのはいったいどっちだ、このバカ!よく考えてみろ!犬だ。犬に決まっているだろ。かわいい犬がやってくると思ったからこそ、それのために施錠を外すんだ。誰が図々しいお前なんかのために、部屋の鍵を開けるものか!いつもふざけたことばかり言いやがって……」

ぶつくさ文句を言いつつ、相手の肩を押してふたりの間の距離を取る。


「……それで、ポッター。いったいいつまでその格好でいるんだ?」

腕を組み不機嫌そうな顔で、ハリーの制服姿をジロジロと見詰めた。


「僕が招待したのは、君じゃないはずなんだけど?」

「ああ、分かっているよ。もちろんだよ。変身するのは得意だし、時間もかからないから、もうちょっとこのままお喋りしない?」

ドラコはゆっくりと首を横に振る。


「いやだ」

「もう少しだけは?」

「……ハリー。約束を反故にするっていうなら、もう僕の部屋に二度とやって来なくてもいいぞ」

この部屋の家主の特権を振りかざし、冷たく不機嫌に応対した。


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