シリーズ小説

□【Like a dogシリーズ】
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事の起こりはつい、きのうの話だ。


恋人か、友人か、それともライバルと呼んでいいのかよく分からない微妙な位置にいる、ドラコとしては、ただの友達として付き合いたいと思っているハリーとの会話がきっかけだった。



放課後の中庭のベンチでぼんやりと座って夕食までの時間をつぶしていたら、相手も暇そうな顔でドラコに断りを入れることもなく、勝手に隣に座り込んできた。

馴れ馴れしく話しかけてきて、なんとなく話し始めた内容が『どんなものが好きか?』だった。


『クィディッチ』
『噛み応えがある固めのクッキー』
『ピアノの音色』
『雨の降ったあとの虹』
『授業のない日曜日』
『お小遣いたっぷりで向かうホグズミード』


などなど、実に下らなくて話にはひねりも何もなく、ただお互いが自分の好きなものを、だらだらとしゃべっているたわいもないテーマなのに、なんとなく気分がよくて、ふたりして笑顔を浮かべていた。

好きなものについて考えるのは、つまらないことや嫌なことを考えて過ごすより断然楽しいし、心が弾む。


「―――で、僕が一番好きなのは犬かな」

「犬が好きなの?」

「うん、そうだ。僕は兄弟がいないだろ。だから両親が僕に寂しくないようにと、赤毛の犬を飼ってくれたんだ。子どもときからずっと、いっしょにその犬と過ごしている。頭がよくて、毛並みは長くてつやつやしていて、賢くてやさしい性格で、僕はその犬が大好きで、僕たちは片時も離れたことがないほど仲がいいんだ」

ドラコはその犬のことを思い出して幸せそうな顔でふわりと笑うと、ふとハリーのほうを振り返って、
「これはちょっと恥ずかしいから、みんなにはナイショだぞ」
と悪戯っぽく、軽くウインクまでつけて、ドラコはハリーに釘をさした。


その柔らかな嬉しげな表情を目の当たりにして、ハリーはただ口をポカンとあけたまま相手に見とれる。


「どうしたんだ、ポッター?」

2分たっても表情が動かないハリーを見て、不思議そうな顔でドラコは問いかけてた。


その怪訝な声にやっと我に返ったように瞬きをすると、ハリーは間抜け面を誤魔化そうとするように、少し焦った顔で慌てて尋ねてくる。

「―――で。それで、犬の名前はなんて言うの?」

相手の一連のギクシャクとした行動に首を傾げつつも、ドラコは気分よく答えた。


「ああ、犬の名前は『ちび』っていうんだ。単純で分かりやすくて、どこにでもいる名前だろ?でもとてもかわいいんだぞ!僕の犬がこの世界で一番かわいい」

ぬけぬけと犬バカぶりを発揮して、ハリーを笑わせる。


しかし次の瞬間には、しゅんとしたつまらない顔でうつむいた。

「でもここは学校だしそのちびに会えなくて、本当に寂しい。今度再会できるのは、次のクリスマス休暇までお預けだなー……」

少しだけ残念そうにドラコはつぶやく。


それを聞いて、ハリーが
「そうだね、ドラコ。それは本当に寂しいよね」
と、何かを理解したように何度もうなずいているのを、ドラコは少し不思議そうに見ていたのだった。



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