シリーズ小説

□【Noelシリーズ】
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「もうたくさん飲んだから、お代わりはいらない」

断ろうとするけれど、
「せっかく持ってきたんだから、とりあえず受け取って」
とドラコに押し付けてきた。


ハリーの親切を無碍にも出来ず、ドラコがそのカップを受け取ると、その中のミルクがモゾモゾと動く。


「わーーーーっ、ハリー!!ミルクが生きている!」
ドラコが大声で叫んだ。


ハリーは笑い転げ始める。


「ちがうよ。カップの中をよーく見て」

見開いた瞳のまま見詰めると、カップの中の白いものは上に盛り上がり「ニャー」と鳴いた。


カップから両耳がぴょこりと立って、白いフサフサの毛並みのまま顔を出した。


「……猫?キティ?子猫がマグカップに入っているぞ、なんで?」

大きく見開いた瞳をそのままハリーに向ける。


「どう、かわいいでしょ?君にプレゼントしようと思って。猫を飼ったことはある?」


ドラコはゆっくりと首を振る。


「ない。家にあった家具はアンティークばかりだったから、爪を研ぐ猫は飼うことが許されなかったんだ。―――だけど僕はずっと猫が飼いたかったんだ。とても……」


おずおずと慣れない手つきで指を差し出すと、子猫は小さな舌先を出しドラコの指を舐める。

嬉しそうにハリーを見上げると、ハリーも上機嫌で笑みを返してきた。


「猫……。本当に僕のか?」

「そうだよ、君の猫だよ。大切にしてあげて」

ドラコは腕を差し伸べてそれを自分の胸に抱きしめた。


白くてフワフワの毛並みが心地いい。

薄いブルーの瞳で鼻は低かった。


子猫はドラコの唇を小さな舌で何度も舐めてくる。

ドラコはくすぐったそうに笑った。


「ハリー、猫ってこんなに舐めるものなのか?」

上機嫌な声を上げる。


「ミルクだよ。ついさっき君がミルクを飲んだから、その匂いに釣られているんだよ」


「ああ、そうなんだ。ミルクを用意しなきゃ」

ドラコは立ち上がり、さっきまで猫が入っていたカップにそれをついで来ようとする。


「猫は猫用のミルクがあるから、それにしなきゃ、お腹を壊すよ」

「へぇー、そうなんだ」

ドラコは珍しそうに頷いた。



ハリーが用意したミルクに顔いっぱいに突っ込みながらミルクを舐める子猫にドラコはうっとりと目を細める。

「この頭が大きいところや鼻の先が黒いところもかわいいな。ああ、本当にかわいい……。ありがとう、ハリー」

ドラコは素直に礼を言った。


ハリーは
「どういたしまして」
と礼を返した。


「ところでこの子猫の名前は何にする?」

ドラコは自分に巻かれていたクリスマスカラーのリボンをほどくと、その猫の首にやさしく巻いてやり、そして微笑んだ。


「彼女の名前はノエルにするよ。きっととびきりの美女になるだろう」

目を細めて、そのかわいらしい鼻を軽くつついたのだった。

■END■
■2007/12/25 up■



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