他の小説
□1.*6月の花嫁*【ペチュニア→リリー←ジェームズ】
2ページ/4ページ
彼女にとって姉が全てだった。
賢く口が立ち、エメラルドの瞳は大きく、赤みを帯びたブロンドは輝きを放っていた。
男勝りで快活で、いつも人の中心にいるような、選ばれたような人物だった。
跳びぬけた特性もなく内向的でやせっぽちな自分と、世間はよく比較したものだ。
「ペチュニア。おまえは姉さんに全部いいものを、持っていかれたな」
冗談でも誰かがそう言おうものなら、相手に食ってかかるのは自分ではなく、姉のほうだった。
「まぁ、あんたの目は節穴なのっ!!このかわいいペチュニアの、いったいどこを見て、そう言っているのっ!このクルクルとウェーブした絹糸のような髪。かわいいまつげ。抱きしめたら折れそうな細い体。桜貝のような可憐な爪先。このハシバミ色の瞳は、光が当たると、薄っすら緑にもなるわ。……まるで、天使よ!それを分からないなんて、あんたバカ?バーカ!バーカ!」
失礼極まりないことを、平気で姉は言ってのけた。
幸せな少女時代だった。
――――そうあの男と出会うまでは。
→