シリーズ小説
□【世にも奇妙な物語シリーズ】
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エンドマークがテレビ画面に現れても、ふたりは無言だった。
一瞬シンと静まり返った部屋の中、テロップが流れドラマは終わり、何事もなかったように、ノキアの携帯電話のCMが流れ始めた。
軽快な音楽に合わせて牛が踊っているのをぼんやりと見詰めていたドラコは、驚いたように叫ぶ。
「え゛え゛ーーーーーっ!あれで終わり!まさか?!」
手に持っていたチップスの袋をグシャグシャにしながら、指を画面に突きつけた。
「なぁ、まさかあれで終わりじゃないだろ、ハリー?」
同じソファーに座っていたハリーの肩を容赦なく叩く。
すっかりぬるくなった黒ビールのグラスを持ち上げ飲もうとしていたハリーは、その弾みで泡が自分の鼻にかかり軽く舌打ちした。
いきなり何するんだよと、文句のひとつでも入ってろうとしたけれど、ドラコはハリーの顔など見ていなかった。
ただただ画面を食い入るように見詰めていて、今自分が何をしたのかすら分かっていないようだ。
ハリーは怒るのを諦めると、肩をすくめてため息をつく。
「終わりなんじゃないの。出演者のテロップも流れたし、ちゃんとエンドマークも映っていたんだから」
濡れた鼻先を袖口で拭いながら、グイッと一気に残っていたビールを飲み干す。
ハリーだってついさっきまで展開が分からないドラマに釘付けで、ずっと飲むことを忘れていたからかなり喉が乾いていたからだ。
ドラコは眉をしかめて、砕けて粉々になってしまった袋に手を突っ込み、バリバリと食べている。
「そんなはずない。きっと続きがあるはずだ」
まるでイライラとした気分を紛らわそうとしているようだ。
すぐひとつのものに夢中になって他のことを忘れてしまうのはドラコの悪い癖だった。
今回はドラマにすっかりのめりこんで、結構大きめのスナック袋の大半を胃に収めてしまっている。
きっと明日は大変な胸焼けになるだろう。
「喉渇いてない?」
缶ビールを差し出すとドラコは画面に釘付けのまま受け取り、一気にあおった。
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