短編小説
□*Over the Rainbow*
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とても不思議な感じがした。
もしかしたら今ハリーの側に立っているのは、自分じゃなかったかもれしない。
その緑の瞳に映っているのは、本当は別の誰かだったかもしれない。
あのときハリーが怪我をしなかったら、自分たちはまだいがみ合っていたかもしれないし、もしかしたら卒業後僕たちは二度と会うこともなかったかもしれない。
別々の道を歩く選択肢のほうが多かったはずなのに、たったひとつの偶然から今こうしてふたりでいっしょに立っている。
……やはりとても不思議な感じがした。
ハリーがいなかったら、僕は今どんな生活をしていたんだろう?
親の言いつけを守って真面目な公務員になっていたのかな。
それとも家柄のいい誰かと結婚して家庭を持っていたのかな。
それとも恋人がマグル出身者で親に反対されて、ふたりして駆け落ちとかしたりして……。
まるで安っぽい映画みたいなことを考えて、全部がありえなくて笑った。
やはりハリーと生活している自分の姿以外思いつかない。
ほかの誰かと暮らしている自分のなんて考えることができなかった。
自分はそう思えるけど、相手はどうなんだろう?
ハリーは別の人生とか考えたことがあるんだろうか?
―――もしかして、と思いながら。
なんだか胸のどこかが痛かった。
締め付けられるみたいだ。
本当は君は誰でもよかったんじゃないのか?
僕じゃなくても誰でも、本当はよかったんじゃないか、ハリー?
それを今、後悔していんじゃないのか?
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