短編小説

□*Rainy day*
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窓をたたく雨音で目が覚めた。

「ああ……、仕方がないな」と僕は呟く。
外は厚い雲に覆われていて、今日は多分一日中、雨だろう。

僕のとなりで寝ていたドラコが少し身動きする。

「──どうかしたのか?」
いつも朝は目覚めが悪いのに、今日ははっきりとした声で呼びかけてきた。

「雨が降っているから、森の向こうにある湖に行けなくなっちゃった。せっかくの日曜日なのに。あの場所は静かできれいだから、きっと君も気に入ると思ったのにな」
ため息をつく。

「そこで、いったい何をするつもりだったんだ?」
ドラコは怒ったような顔でにらんできた。

「──えっ?君は本を読むのが好きだから、本を持って読書に……」
「本当に読書かどうだか!」
ふいと横を向いて、寝返りを打って、布団にもぐりこんでしまった。
僕はそんな相手の様子を見て、かなり焦ってくる。

──やっぱり、悪戯をしすぎてしまったみたいだ。

実はこの一週間、ずっと彼の後を追いかけ回して、からかってばかりいたからだ。

最初のほうはドラコも、ずっと我慢していたみたいだったけれども、3日目くらいになると、もう僕の顔を見ただけで、回れ右をして逃げ出すことのほうが多くなってきた。

それでも、懲りずに僕が悪戯をしかけてくるので、最後には「しつこいっ!」と怒って、授業以外は部屋から、すっかり出なくなってしまった。

移動中のどんな場所にも、クラップとゴイルを伴って、自分がひとりになることがないようににするほどの、徹底ぶりだ。

それでも、真夜中に未練たらしく部屋に忍び込んだら、狭い部屋にベッドを運び入れて、3つも並べてがっちりと、護衛のふたりに挟まれて、あまりの窮屈さに「うん、うん」うなされながら、寝ている恋人の姿を見たら、何もできなくなってしまった。

──どうやら僕は、そこまで彼を追い詰めてしまっていたらしい。

それで、やっときのうから僕は彼に悪戯するのをやめたら、心底ホッとしたのか、なんとかドラコの機嫌も少しはよくなり、昨晩から食堂にも顔を出すようになった。

しかし、もちろん、その原因を作った僕とは、一切顔を合わせようとはしない。
怒った顔で横を向いてばかりだ。

僕はドラコのことが好きすぎて暴走してしまい、いつも失敗ばかりしてしまうんだ……

土曜の夜、彼はここのところ毎週、僕の部屋に泊まりにきてくれていた。
さすがにきのうは来ないだろうなと、諦めてしたら、当たり前のようにドラコはやって来た。

ドアから入ってきた彼の姿を見て僕は、心底ほっとしたんだ。
「怒っている?」とは聞かなかった。
きつい瞳を見ただけで、十分に気持ちが読み取れたからだ。

ドラコは会話をかわすことなく、ムッとした顔でベッドに潜り込んでくる。
そして、自分のとなりの枕をポンポンとたたいた。

──僕に『来い』というジェスチャーなのだろうか?

恐る恐るベッドに入ると、僕のパジャマの襟元を引きつかみ、手繰り寄せて、そのまま、ものの1分とたたないあいだに、僕の胸に頭を擦り寄せて、寝息をたて始めた。

まるで、これじゃあ、自分が枕になったみたいだ。
しかし僕は苦笑して、そのまま恋人の枕になって、大人しく眠ることにした。

あしたは彼が気に入りそうな場所を見つけたので、それで機嫌を直してもらおうと思っていたのに、朝起きたら雨だなんて……

『ハァー』とため息をついて、雨降り模様の曇り空を見上げた。


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