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□3.*Gold*【ドラコ×ロン】
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1.
ロンはぼんやりと廊下から、空を見上げていた。
夏休み明けの放課後の校舎はどこかガランとした、気の抜けたような気だるい雰囲気が、ただよっている。
ここは特別教室へ行くための廊下で、西の一番端にありひどく閑散としていた。
だけどロンが立っている場所からは、クイディッチ用のグランドが近くて、その練習風景がよく見えた。
赤いマントを翻して素早い箒さばきで、空中を旋回して行き来している姿はまるでワシのようだ。
それをロンはただ頬杖をついたまま、瞳でそれを追っている。
そっと背後からロンの肩を抱くものがいた。
「どうしたんだ、ウィーズリー?眠そうな顔をして」
うっとおしそうにその腕を振り払おうとしながら、視線はそのままグリフィンドールの練習風景から反らそうとしない。
「放せよ、マルフォイ。暑苦しいから、僕にくっついてくるな……」
両手を前に回して、ロンを背中から抱きしめるようにからだを寄せる。
ドラコのひんやりとした冷たさがシャツを通しても伝わってきて、ロンはからだを少し震わせた。
陶器で出来たような滑らかで白い肌。
プラチナに近い柔らかい髪。整いすぎた顔はひどく酷薄そうだ。
その魅惑的な薄灰色の瞳がロンを見つめてニッと笑う。
(こいつには本当に赤い血が流れているのかと疑うほど、作り物めいた感じがするのはどうしてだろう?)
ロンはいつもドラコを見て感じるのは、彼が自分と同じ血が流れているような気がしないということだ。
もしそんなことを言えばドラコは腕を組み、当然のように答えるだろう。
「あたりまえだ。僕は生粋なそれでいて、高貴な選ばれし純血だからな」
と、鼻高々に言うに決まっている。
(純血というなら、僕だって純血だ。マルフォイと同じぐらい貴重な血筋だ。でも僕はそんな古臭いことなんか、これっぽっちも誇っていないけどな)
フンと鼻を鳴らして、ロンは相手を無視した。
だが無視を無視とも思っていないドラコはロンのブロンズに近い肌を見て、バカにしたように耳元にささやく。
「ウィーズリー、家で夏休みに畑仕事でもして野菜を作ったのか?ひどい日焼けで、真っ黒だぞ」
「母さんの命令で強制的に畑仕事もしたし、ほかにいろいろ戸外で遊んださ。もちろんハリーやハーマイオニーも僕の家にやってきて、そりゃあ楽しい夏休みだったよ」
ロンは振り返って、笑う。
「どうだ、うらやましいだろ?」という感じで。
「この減らず口め!」
にらみつけてその唇をふさごうとしたのを、ロンは手で押し戻す。
「イヤだ」
「お前がいつも素直に僕のいうことをきいたことがあるか?「イヤ」としか言わないじゃないか、ウィーズリー。ひどくいいときも、お前は「イヤだ。やめろ」とばかり言うよな……」
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