短編小説

□*Holiday*
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*このお話は7巻ネタバレあります。




 瀟洒な白い外観の邸宅の前に、ふたりの人物が姿あらわしでふわりと風のように現れた。


 ひとりは背が高く、もう一人は相手の半分ほどの背丈しかない。

 そしてどちらとも同じようなクシャリとした収まりのつかない艶やかな黒髪をして、瞳は深い緑色をしていた。


 広大な庭に放された孔雀たちが美しく羽を広げているのを横目に見ながら、レンガで舗装された道を登っていく。

 たどり着いた入り口の豪華で重々しいノッカーを叩くと、すぐに両開きの扉が開かれた。

 ギギィーというきしんだようにゆっくりと開く扉の動きに我慢できないように、中からひとつの人影が転がるように飛び出してくる。

「アル、ひさしぶり!」

 そう言って、黒髪の少年に抱きついた。

 突然の出来事に驚き、相手の重さにひっくり返りそうになりながら、慌てて相手の背中に腕を回して抱きしめ返した。

「元気にしてた、スコア?」

「うん!」

 ふたりして嬉しくてたまらないように、その場でピョンピョンと飛び跳ねる。


「夏休みに入って会ってなかったから、二週間ぶりになるね」

「会えないのがすっごく長かった。寮でずっといっしょだったから、こんな長く会っていないなんて信じられないくらいだよ」

「僕も!僕も!」

「さぁ、上へ行こう!僕の部屋は二階なんだ。今日ここへ来たのははじめてだろ。僕の部屋を紹介するよ」

「本当に?楽しみだ」

「こっち、こっち!」

 そのまま二階へと連れ立って走って行こうとする子供に慌てて声をかける。


「アルバス!待ちなさい。まずは挨拶だ。父さんがいつも言っているだろ。きちんとしろって」

「うん、分かった」

 黒髪の少年は慌てて引き返してくると、出迎えたドラコの前に立った。

「今日はご招待をどうもありがとうございました」

 ペコリと丁寧にお辞儀をする。

 顔を上げ見上げてくる瞳がまるで新緑のようだ。

 好奇心が強そうな、利発的な表情を浮かべ、手足は背丈のわりにはひょろりと長かった。


 ドラコは笑みを浮かべると、「気楽に過ごしなさい」とゆっくりとしゃべり頷く。

 そして、淡いブロンドのほっそりとした少年が、もう堅苦しい挨拶は終わったとばかりに、相手の腕を引っ張ると、まるで子犬がじゃれあうように、ふたりしてバタバタと階段を駆け上がっていった。


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