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□1.*6月の花嫁*【ペチュニア→リリー←ジェームズ】
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その日、派手に泣きじゃくっていたのは、花嫁ではなかった。



「うわーーーん、知らなかったわ!ペチュニアがデブ専だったなんてーっ!いやーっ!」

そう言って花嫁の姉は妹の胸に顔をうずめた。

ボロボロと涙をこぼし、イヤイヤと頭を振る。



ペチュニアは笑いながら姉の顔を上向かせると、レースのハンカチで目元をぬぐった。

「ひどいわ、リリー。わたしの趣味が悪いみたいじゃない」

「そうよっ!断然悪いわよ!!ひどすぎよーっ」

そう言ってまたぬぐったばかりの瞳から、涙をボロボロこぼした。



「わたしの大切な妹が、あんなデブと!イヤーっ!!」

もう辺りもはばからず、号泣する。

目の周りのマスカラは流れ、泣きすぎて鼻は真っ赤になっていた。

「もう泣かないで、リリー。美人が台無しよ」

「そんなわたしの化粧なんてどうでもいいわよ!ペチュニアがあんなデブと……デブと……。―――うわーんっ!」

またリリーは派手な声で、泣き声を上げる。




「いい加減にしなさい、リリー!ペチュニアが困っているじゃないの」

母親に窘められても、リリーは聞く耳を持たなかった。

「お母さんはいいの?このかわいいわたしの妹が、あんなヒキガエルみたいな男と結婚するのよ。信じられない!」

リリーは妹に顔を近づけると、真剣な表情で言った。

「いいこと、ペチュニア。まだ結婚式の前よ。籍は入ってないわ。止めるなら、今でもできるのよ!」

じっと相手の瞳を見つめる。



花嫁姿のまま、ペチュニアはクスリと笑った。

もし本当に今ここで自分が「イヤだ」と一言言えば、きっと姉は自分の手を引いてこの教会からわたしを連れ出してくれるだろう。

あとからこっぴどく両親に怒られようと、親戚中から苦情が出ようが、彼女は自分を連れ出してくれる。

「あなたのためなら、何でもないわ!」

そう高らかに宣言して。




姉の思いが嬉しくて、心がいっぱいになる。

(大好きな、わたしのリリー……)


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