*オリジナルSS*【下に追加されます】

□『空』
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窓際、後ろから3番目の席で彼はいつも空を見上げていた。



何を見てるの?
面白いものある?

気付けば彼の事を考えてしまう。
あぁ、これが恋なのかなぁ?なんて考えて、少し笑い、心の奥がぎゅうってなった。



初めは
「何が見えるの?」
そう聞いても
「別に」
としか答えてくれなくて。


でも懲りずに何日か続けると、「別に」が「空」に変わった。
さらに何日か続けると、

「空が、キレイだから。同じに見えても全然違う、見てて楽しいんだ。ほら、今日は空が近い」と話してくれた。


か、会話だ………!


次の日からは、"その日の空"について話したりして。
窓際後ろから4番目の席は私の特等席になった。






いつの間にか空についてだけでなく、普段の生活や学校での事も話すようになっていて。

その事実が私にとってすごく大切な宝物になった。


彼との会話は、すごく安らげて。すごく暖かくて。そしてすごく心地よかった。



お互い好きとは言わなかったけど、なんとなくそんな気がして。

どちらともなく、気付けば手を繋いでいた。



その手を離したくなかったし、離す気もなかった。


そんな平穏な日がいつまで続くのかはわからないけど、いつまでも続けばいいな、なんて願った。


我ながら子供みたいな願いだが、本当に心から願ったんだ。

空ばかり見上げていた二人だったけど、今はただ、真っ直ぐに。


明日死ぬかもしれないし。
死なないかもしれないけど、今は精一杯歩いていこう。

でもたまには寄り道もして、疲れた時は空を見上げて。



君と一緒に、どこまでも。
君となら、きっとそれが出来るから。

*END*

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