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□『その対価は』
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「望みを1つだけ叶えてあげよう」
魔女は僕にそう言った。
「何か対価がいるんだろう?」
「いぃや、いぃや。いらないよ。ただし1つだけ、1つだけだよ。忘れないで、1つだけ」
だから僕は願ったんだ。
「ずっと見てた娘がいるんだ。その娘と仲良くなりたい。」
「仲良くなって、どうしたい?」「仲良くなって…幸せなあたたかい家庭を築きたい」

魔女は笑って、姿を消した。
小さな呪文を残して消えた。

僕はその娘と仲良くなった。そして長い年月を重ね、幸せな家庭を築いていった。
この幸せは、ずっと続くと思っていたんだ、その時までは。


「望みは全て叶ったかな?」
再び僕の前に現れた魔女は、とても残酷な笑顔をしていた。

「叶ったんだね、オメデトウ。さぁ、対価を貰おうか」

僕はびっくりして、怒鳴るようにこう言った。
「あの時対価はいらないと言ったじゃないか!」

魔女は嬉しそうな笑顔でこう言った。
「あぁ、対価はいらないさ、1つ目の望みのね。でもいらないのは1つだけ、忘れないで、1つだけ!」

………ドクン
心臓が大きく脈打った。

「ぼ、僕は1つしか願ってなんか………」
「いぃや、いぃや!2つ願った!お前は2つ、願ったよ。"娘と仲良くなりたい"と、"幸せな家庭を築きたい"とね」
「そんな………!」

「あぁ、今日という日を私はずっと待っていたんだ」
「ずっと…待ってた…?」
「あぁ、そうさ!お前が幸せの絶頂にたつこの時を!」
「何を………」

そして魔女はこう言った。
「さぁ、堕ちろ地の果てへ」


僕は失った。
彼女を失ったのか、僕自身を失ったのかはわからない。
ただわかるのは、もう何も判らないという事だけ………

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