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□『音』
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カサ カサ カサ。
家に帰った私は、その"不審な音"を聞いた。
この時間、家族はまだ帰っていない。家には私しかいないはずだ。

「だ…誰か、いるの?」

おそるおそる音がする方へ向かう。
泥棒だったらどうしよう?
変質者だったら…!

昔、何かのテレビで見た気がする。こういう時はいつでも外に逃げられるように、玄関を開けっぱなしにしておく事が大切らしい。
私は、玄関にある傘立てから傘を1つ手に取った。
その傘を両手でしっかりと握り、生唾をのむ。

   ごくり。

少しずつ、音をたてないように進む。その不審な音のする方へ………。

息をのんだ。両手で握りしめている傘は何の役にも立ちはしない。血の気が引く。涙が溢れそうになる。
私が手にすべき武器は傘ではなかった。

「さ、殺虫剤…いや、せめて新聞っ…!」

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