*オリジナルSS*【下に追加されます】
□『音』
1ページ/1ページ
カサ カサ カサ。
家に帰った私は、その"不審な音"を聞いた。
この時間、家族はまだ帰っていない。家には私しかいないはずだ。
「だ…誰か、いるの?」
おそるおそる音がする方へ向かう。
泥棒だったらどうしよう?
変質者だったら…!
昔、何かのテレビで見た気がする。こういう時はいつでも外に逃げられるように、玄関を開けっぱなしにしておく事が大切らしい。
私は、玄関にある傘立てから傘を1つ手に取った。
その傘を両手でしっかりと握り、生唾をのむ。
ごくり。
少しずつ、音をたてないように進む。その不審な音のする方へ………。
息をのんだ。両手で握りしめている傘は何の役にも立ちはしない。血の気が引く。涙が溢れそうになる。
私が手にすべき武器は傘ではなかった。
「さ、殺虫剤…いや、せめて新聞っ…!」