小説

□『食べていい?』
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『食べていい?』





「壬晴。」
「なぁに、…宵風?」
「壬晴がほしい。」



ことの始まりは確か今から1時間ほど前のこと…。




雪見さんが仕事だ、とか言ってバタバタしてた時のことだった。

「やべぇ!」

慌ててる雪見さんをふーん、って感じでみてた。

多分いつもの日常。
もう慣れてる。
むしろ起こらなきゃ変だと思うくらい。

そんなことを考えている時だったはず。

宵風が不意に俺の頬に触れてきたんだ。

「…宵風?どうした…、」
「最近、壬晴に触れてない。」

そう言って軽く頬にキスされたことを覚えてる。

「雪見さんの前ーっ!」
「気にするな。」


何となく変だなとは思った。
いつもより明らかに強引で。
何より人前を気にしないことがおかしかったんだ。
…嬉しかったんだけどね、ちょっぴり。

「…ん。」
「壬晴…。」
タイミングがよかった。
雪見さんが部屋に走っていったから。
見られたら恥ずかしいし…かわいそう、だよね。
「壬晴。」
「…え。あ、ごめ…」
「他のこと考えないで。」
まだ謝りかけていたことにも関わらずに、ぎゅっと抱きしめられる。
「よいっ、」
「離さない。」

予知能力者?
とか思いたくなるほど、宵風は俺の考えていることが分かるらしい。


…愛の力だったらいいのにな。


つい余所事を考えてしまうのは君が好きな証拠、なんだけど…。

ぎゅうっ…。


…許されないみたいだね。


「壬晴…。」
「ふぁ…っ。」
「僕だけみて。」

宵風は俺の弱いとこ、なんてお見通しなんだ。
目が離れられない…。


君に釘付け。

「ん…っ、…はぁ。」
確かに宵風に唇を触れられるのが久しぶりな気がする。
呼吸が追いつかない。

そのせいか不満そうな君がいた。

首筋をぺろり、と舐められた。
「ひゃ…。」
甘い声をあげてしまった。



「お前ら…。」

ハッと気がつくと雪見さんが呆れた顔つきで立っていた。

宵風に舐められただけで甘い声をあげてしまった俺は、見られたと思うと急に恥ずかしくなってきた…。

宵風の中に掴まっていた俺は素早く抜け出した。


何となく求められてた気がする。

…嫌じゃないんだけど。
今はダメ。
…ほら、あれだよ。
空気読もうよ?
ね、宵風…。

すると雪見さんが、
「壬晴、今日は俺と来いっ。じゃなきゃこいつに食われるぞ!」
と言って俺の手をグイッと引っ張った。

「ゆきみさ…。」
「壬晴を離せ。」
宵風がお決まりのポーズをとった。


俺も雪見さんも宵風には敵わない。
…少し方法が違うような気もするけど。


「…待てよ!よい」
「ダメっ!」

雪見さんの言葉を邪魔して、俺は宵風へと駆け寄った。
半ば涙目で。
最後の抱きつきにはジャンプをする。
足に力を入れて…。
「よいてっ!」

ドンッ。

成功。
見事に宵風を後ろに押し倒した。
「みはっ。」


そう、ここで覚悟を決めたんだ。

雪見さんが殺されないように。
宵風が気羅を使ってしまわないように。



「俺を好きなだけ食べていいから。」

…宵風は俺におねがいとかすると弱いって知ってるんだ。

「みはる…?」
「おぅい!?忠告聞いてねぇのかよ!」


しょうがないんだってば…。
他にどうやって宵風を止めるの?

結局最後はこうなるんだから、今日は俺から誘ったってことで。


「だから、おねがい。もうやめて…宵風っ。」
宵風が死んじゃうよ…、と涙ぐんで言えば強く抱きしめられる。


「雪見さん今のうちに…行って…。」

頬にキスをくらいながら微かな声で言った。

「あぁ、すまねぇ!」

再び急ぎ出した雪見さんをみて宵風は、
「雪見。」
「あ?」
「この前買ったアレ…。」
「…?この前買ったアレ?」
「どこにある。」


俺には会話が成立しない。
この前買ったアレってなんだっけ?
と頭を悩ませる雪見さん。


何か俺だけ分かんないのも悔しい。


「あぁ、アレな!…使うのか?」
「早く言え。」
雪見さんは引き出しから二番目、と言いながら逃げるように扉から出て行った。


宵風が軽く唇にキスをしてから雪見さんの部屋に走っていった。


…何だろう、アレって。
逃げられたかもしれないけど、気になるからそこで待ってたんだ。


「壬晴、つけて。」
ゴソゴソと袋の中をあさると…。
「猫耳…?」
らしきものがでてきた。


…まさか!?

「俺がつけるの?」
「そう。」
さっきまでの不満そうな顔はどこに消えたの?
そう聞きたくなるぐらいに宵風はご機嫌だった。
…抵抗?
しない、しない。
したら…?
離してくれないだろうな。
宵風が満足するまでやられる、きっと。
「わかったよ。………はい。」
「…壬晴、カワイイ。」

笑った顔にドキッとしてたら、手を押さえられてて…気付いたら床に倒されてた。

そして現在にいたる。

「壬晴」
「なぁに、…宵風?」
「壬晴がほしい」

…そう言われたんだ。

何も言わずに黙って君を見ていたら。
ちゅ、と音をたててから君は優しく触れてくれた。
そして。
「優しくするから…。」って言いながら顔をのぞき込んできた。
「さっき言ったでしょ?…食べちゃっていいよ。」
くすっ、って笑ったら壬晴好きってキスされた。
…俺も。
宵風だけだから。
大好き…。


…甘い声だけが部屋内に響く。
でも君が好きだからいいんだ。
きっとこれも大切な思い出になるから…。










「壬晴。」
「…なに?」
「可愛かった。」
「〜っ!!宵風のバカっ」
そう言ってまたキスを交わした。
好きだよ、宵風…。


けど俺はその時、いつか見返してやろう…そう思った。









甘いの書こうとしたらごめんなさい!
微妙に裏らしき言葉が出てしまいました!
猫耳は好きです♪
最初から何言ってんの!?ですみません…!

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