小説

□『聞こえないフリ』
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『聞こえないフリ』



起きてるんだろ、
って聞いたのに。

君は、
もう死んだよ。
って言った。


なんで?

なんで、僕の方向いてくれないの?



だって約束だったんだよ、
僕を消してくれるって。

もう使えるって君は言ったよね。
俺の力なら君を消してあげられるって、
あれは嘘?



どうして使ってくれないの?

…僕を苦しめたいの?






あぁ、違う。
…こんなのただの八つ当たりだ。


迷ってるのは僕の方なんだ。

君が泣きながら、
だきしめて、
最後だから…。
なんていうから離れられなくなった。




君のせいだ。


…でも僕が悪い。
君を好きになってしまったから。



…やっぱり僕の頭はおかしいんだ。

今さら、
生きたいって言ったら…君は僕を嫌いになるかな?


…もう、好きって言ってくれなくなるのかな。

触れられなくなるのかな…。



そして君を苦しめてしまうのだろうか。
また泣かせてしまうのだろうか…。
…傷つけてしまうのだろうか。


それは嫌だ。



つくった笑顔でスキなんて言わないで。
決まった心が揺らぐから。

弱々しい力で僕をだきしめないで。
つよく抱きしめたくなるから。


「…生きたいよ、壬晴っ、君と、いっしょに…っ。」
あふれ出す、ホントの気持ち。


おねがいだから嫌いになってよ…。
僕を消して、忘れて…。
でも、いっしょにいたい…。


あぁ、もどかしいよ…。

「よいて…。」
僕が泣いたら、君も泣いた。


やっと、空回りが終わったんだ…。


「生きてよ…、俺のために…。」


優しい君は僕を許すの?

…やっぱり好きと思ってしまう。
「みはるっ…。」

壊れるほどに抱きしめた、君を…。



「壬晴、好きだよ。」
「え…、何て言ったの?」

いじわるな君は聞こえないフリをしてる。
…もう一回言うなんて恥ずかしいから、
「好き。」
耳元でそっとささやいたら、
「うん。俺も大好きだよ、宵風。」
君は笑ってそう言ってくれた。



「…聞こえないフリ、してただろ。」
「さあね。」







何となくいじわるな壬晴を書きたくてですね。
そんな壬晴に振り回される宵風みたいな…。
またシリアスから甘くなっちゃった…。

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